イスラエル企業Itamarが医療グレードウェアラブルのSpryを買収、睡眠時無呼吸症候群の連続モニタリングを目指す
呼吸器睡眠障害の診断を支援する非侵襲デバイスを開発するイスラエルのItamar Medicalが、米国ベンチャー企業のSpry Healthを買収することに双方で合意をしたことを、2021年1月12日に発表した。
Itamar Medicalはイスラエルのテルアビブ証券取引所と米国新興市場のナスダックに上場しており、すでに年間おおよそ40億円程度の売上を上げている。FDAの認可を受けているSpry Healthの医療グレードウェアラブルデバイスを活用することで、時計型デバイスでの睡眠時無呼吸症候群の遠隔患者モニタリングを実現することを狙うという。
睡眠時無呼吸症候群のモニタリング
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、WHOの2009年の調査によると世界で1億人に達すると言われており、別のResMedによる近年の発表では世界で10億人規模にもなるとも言われる、非常に患者人口の大きい症状だ。
現在、こうした睡眠時無呼吸症候群の治療ではCPAP(Continuous Positive Airway
Pressure:持続気道陽圧)が用いられている。しかしCPAP療法中の大半の患者は治療継続のために毎月受診を行い、機器の使用記録をもとに医師からの指導を受けており、頻回の受診は患者さん・医療機関双方にとって時間的制約の問題が生じていた。そこで、遠隔モニタリング技術の実用化が模索されている。
Itamarが開発した指先での動脈拍動量変化のウェアラブルセンサ
Itamarはこれまで独自に、指先での動脈拍動量の変化の非侵襲センシング技術を開発してきている。特定の信号パターンを使用し、開発されたアルゴリズムは睡眠時無呼吸の程度を決定する際に使用される2つの指標、無呼吸低呼吸指数(AHI)と呼吸障害指数(RDI)を算出するのだ。
ただし、同社のデバイスでのモニタリングは、現時点では1日間の睡眠状態から無呼吸症候群の程度を診断するのに適しており、毎日の連続したモニタリングには向かないという課題があった。
医療グレードで生体センシングが可能なデバイスLoop
今回買収されるSpry Healthは2013年に米国サンフランシスコで設立されたベンチャー企業だ。これまで約8年間、同社はLoopというウェアラブル型のデバイスを開発しており、2019年4月、ついにFDAの認可を得たことを発表した。
同社のLoopは光学センサーを搭載したウェアラブルで、SpO2、呼吸数、心拍数を医療グレードで測定することができる。通常、光学系のウェアラブルでSpO2で医療機器認証が取れているデバイスは少ない。
同社はこのデバイスを使って、COPDなどの慢性疾患の患者の症状悪化の兆候を検知する技術をカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)と共同研究を行い開発していた。
今回、Itamarに買収されることで、Itamarは毎日連続してウェアラブルで生体データ(特にSpO2)を取得できるようになり、新しい睡眠時無呼吸症候群向けのソリューションを開発するという。
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