シリーズAで24m$を調達したAI睡眠ベッドを開発するスリープテックBryteを解説
2021年1月13日、AIベッドを開発するスリープテックのBryteがシリーズAで24m$の資金調達を行ったことを発表した。
今回のシリーズAのリードインベスターとなったARCHina CapitalのHuang氏は、自動車業界で有名なLuminar Technologiesや3D Printingで有名なCarbonなどへの投資を行った人物としても有名であり、今回、Bryteへ投資を行ったことが注目されている。
AI睡眠ベッドのスリープテックBryteとは
睡眠科学×ベッドの組み合わせ
Bryteは2016年に米国シリコンバレーで設立されたベンチャー企業。最新の睡眠科学によって設計されたAIベッドRestorativeBed™を開発している。
Bryteは複数のベンチャー企業のCEOを経験しているJohn Tompane氏、米国の研究開発型電気メーカーのRambusのチーフ技術者のEly Tsern氏、フィリップスなどで情報処理を手掛けてきたJonny Farringdon氏によって設立された。アドバイザーにはUCバークレーとスタンフォードの睡眠研究の権威を迎え入れている。
この睡眠科学×ベッド(あるいはマットレス)というのは、これまでありそうで必ずしも多く無い組み合わせである。これは睡眠科学というのがまだ解明されていないことも多いこと、そしてベッドやマットレスメーカーだからといって睡眠科学に詳しい訳ではないことが背景としてある。
近年注目される寝具×テクノロジー
上記の理由から、実は睡眠領域でセンシングから睡眠改善というソリューションまでを一気通貫で繋げている例は多く無い。日本においてもエアヴィーブなどサイエンスに力を入れてきている企業はあるが、センシング部分は欠けている。
そうした流れの中で、昨年のCES2020で注目されたのが、「スマートベッド」や「スマート枕」であった。この領域で先行する米国大手企業のSleep Numberは、睡眠中のベッドの温度に着目し、人が質の良い睡眠を取れるように温度をセンシングしながら自動調節するスマートベッドを開発し、イノベーションアワードの中でも優秀な製品に与えられるベストオブイノベーションを受賞した。日本のパラマウントベッドは眠りの角度に注目して、ベッドを傾けるActive Sleep Bedを手掛ける。こうした製品も切り口としては近いものとなる。
Bryteはより細かい制御を行い「温度」と「圧力」で深い睡眠やREM睡眠を増やす
上記の様な業界の状況に対して、Bryteは、より細かな制御を行う。内蔵センサーと100個のコンピューター制御空気圧コイルを備えたベッドは、心拍数と呼吸をモニタリングし、そのデータを元に睡眠ステージを判定する(同社における睡眠ステージは、起きている状態、浅い眠り、深い眠り、REMの4段階)。センサーの詳細は不明だが、特許を見ると、圧力センサを使っていることから、体動の動きから心拍数や呼吸を算出するタイプのものと推測される。
入眠する際には体が自ら体温を下げて、手足などから放熱することで、スムーズな入眠を促すと言われている。そして、入眠後に現れる深い睡眠(特に徐波睡眠)時においては、さらに体温の低下が起こると言われている(※1)。そこで、BryteのAIベッドは初期の睡眠段階をセンサーで検知し、ペルチェを含む熱電デバイスによる冷却機能が働き、体の中心部の温度を穏やかに下げ、深い睡眠の重要な段階に導く動きを行う。
また、睡眠中に圧力センサを通して人のポジションをモニタリングしており、REM睡眠中に、アクティブコイルをインチ単位で微調整し、REM睡眠を増やすという。(いわゆる体圧分散機能に近いものと推測する)
同社の特許(WO2019213329A1、※2)によると、温度制御は睡眠状態と睡眠サイクルを考慮して行われているようであり、かなりち密に制御されていることが伺える。
5つ星ホテルへ提供中
同社のユースケースとしてホテルが挙げられており、オーベルジュホテル、カリヨンマイアミ、ロンドンウェストハリウッドアットビバリーヒルズ、インスピラートなどの5つ星ホテルに対してすでに導入されているという。なお、インスピラートの創設者はBryteに出資も行っている。
(同社のウェブサイトはこちら)
参考文献
※1 テルモ体温研究所 睡眠と体温(ページはこちら)
※2 Sleep phase dependent temperature control and learning methods to optimize sleep quality(WO2019213329A1)
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