米国で最大のEV充電ネットワークを保有しているChargepointがSPACによるIPOを行うことを発表したのは昨年9月のことであった。そして、続いてEVgoも同じスキームで上場を行うことを2021年1月22日に発表した。

EV(電気自動車)でもSPACが相次いでいるが、EVの充電インフラでも起こっている上場による巨額資金調達の動きであるが、今回はEVgoについて見ていこう。

100%再生可能エネルギーによるEV充電ステーションを展開するEVgo

EVgoは2010年に米国で設立されたベンチャー企業で、100%再生可能エネルギーを使ったEV充電ステーションを米国で展開している。

米国34州の67の大都市圏に800以上の急速充電場所を持ち、ここまでで累計22万人以上の顧客にサービスを提供している。EVgoの急速充電器は、日産リーフやBMW、テスラモデルS / 3 / X / Yなど、CHAdeMOアダプターを備えたすべての急速充電対応EVモデルに50kW以上のサービスを提供している。

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EVgoの公開している投資家向け資料によると、現在EVgoの米国都市部におけるDC急速充電のシェアは34%(あくまで都市部で、かつ急速充電セグメントであることに注意)であり、コロナウイルスが影響する前の2020年1月における1年間の成長率は45%(充電供給量ベース)と、大きく成長している。

なお、EVgoは2019年12月に北米の大手電力インフラ会社のLS Powerによって買収されており、子会社となっていた。今回のIPOにより、時価総額は2,600m$(約2,600億円)になり、IPOによって調達する金額は575m$(約575億円)となるという。取引完了後にはEVgoの経営陣とLS Powerが保有する株式は約74%になると推定されている。現在、同社は取引の手続き中であり、2021年第二四半期に完了する計画となっている。

EVgoの売上は、2020年で14m$となっており、2024年までに324m$になるとその売上計画値を発表している。

GMと提携し今後5年で2,700台の充電インフラを追加

EVgoはゼネラルモーターズと提携し、今後5年間で2,700台の急速充電インフラを追加することを2020年7月に発表している。

食料品店、小売店、娯楽施設、交通量の多い場所などの人が多く訪れる場所において高速な充電機能のいくつかにアクセスできるようにする。人々が通常15〜30分をその場所で過ごす間に利用可能な高速充電で、用事を済ましたら充電ができているような状況を実現することを目指している。

この充電ステーションは多くのケースで、少なくとも4台の車両を同時に充電することができ、100〜350kwの機能を備えた新しい充電技術を備えている。なお、こうした動きに合わせて2020年10月にGMが発表した第三世代電気自動車トラック「ハマー」では350kwの急速充電に対応したモデルとなっている。

電気自動車の販売やインフラ整備が急速に進展

なお、世界では現在電気自動車(完全電気自動車またはプラグインハイブリッド)の販売台数は欧州で急拡大している。2020年と2019年を比較すると、特に欧州において前年比137%と大きく成長し、中国と並んで年間100万台の販売台数を超えた。

米国は現在年間30万台程度の販売となっており、直近はそこまで伸びてはいないが、中期的に見ると今後成長していくことは間違いない。なお、日本は電気自動車の販売台数はわずか3万台前後に留まっており、むしろ2020年には前年比で販売数が減少している。

電気自動車の販売台数

世界におけるEVの年間販売台数(単位は千台)
EV volumes.comより当社作成

なお、充電インフラの整備では中国・米国が先行する。2020年6月に公開されたStatistaの統計によると、2019年までの公共で利用可能なEV向け充電器の数は中国が圧倒的に多く、次いで米国が牽引している。日本は国土の大きさで考えると必ずしも大きく遅れているわけではない。しかし、ChargepointやEVgoなどの民間企業が巨額資金を調達して急速に整備を行うことを指向する米国と、HubjectやIonityなどの欧州OEM連合が形成するコンソーシアム型の整備により、様々な充電インフラ投資へのニュースが報じられており、今後も市場は欧米中国を中心に大きく成長していくと見込まれる。

公共で使える電気自動車充電の数

Statista統計データより作成(数値は台)

ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像についてはこちらの記事も参考。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


電池にとって重要となる、Power Dayで発表されたフォルクスワーゲンの電池ロードマップ発表の内容についても整理したのでご参考。

参考:Volkswagenが2030年までの電池ロードマップを公開、さらにEVを強化へ


ー 技術アナリストの目 -
Chargepointに続いてEVgoもIPOで巨額の資金を調達することになる。上場手続きが終われば、多額の資金を手にすることになり、米国での充電インフラへの投資に弾みがつくだろう。また、350kwの急速充電も出てきているが、こちらは車両・バッテリ側でも対応していないと実際にはそのスペックを発揮することが難しいため、現在はやや話題先行気味ではある(また冷却装置やケーブル、受電設備などはどうなっているのか、やや気になるところ)。この点についてはEVsmartBlogさんの「ポルシェ・タイカンの急速充電が当面250kwに制限」という記事も大変参考になる(※1)。

参考記事

※1 ポルシェ純電気自動車「タイカン」の急速充電は当面250kWに制限と報道(リンクはこちら