スマートウォッチのEmpaticaがCOVID-19の初期症状検出で欧州で初めてCEマークを取得
Empaticaは2021年3月9日、同社が開発したスマートウォッチを使ったアルゴリズムがCOVID-19の目に見えるような症状が現れる前に、早期に初期症状の兆候を検出するシステムとして、欧州で初めて医療機器クラス2としてのCEマークを取得したと発表した。
医療グレードスマートウォッチ×AIシステム
Empaticaは2011年に設立されたMITスピンオフベンチャー。元々は同社はてんかん発作を検知するスマートウォッチEmbrace2を開発し、このデバイスとシステムは米国FDAから初めてウェアラブルを使ったてんかん発作検知の医療機器認定を得ている。
Empaticaはその後、2020年にはCOVID-19の初期症状検知のAIアルゴリズムAuraの開発に着手。Empaticaの医療用スマートウォッチであるEmbracePlusを使い、生体データである心拍数、心拍変動、皮膚温度、呼吸数、皮膚電気活動(EDA)を取得し、解析する。スタンフォード大学と連携して研究を進めており、2020年11月には米国陸軍医学研究開発コマンド(USAMRDC)での研究助成プログラムにも採択されていた。
同社の発表によると、検証研究では、Auraは感染の可能性のある患者を検出することに対して0.94の感度を示した。検出はウイルス感染から平均2日後に検出反応があったという。このアルゴリズムは、H1N1(季節性インフルエンザ)、ライノウイルス(風邪の一種)、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の3つの異なるウイルスから生じた一般的な生理学的反応に適用される。
Empaticaの最高経営責任者CEO Matteo Lai氏は、次のように述べた。「Auraを持つ私たちの目標は、感染のリスクをスクリーニングし、テストの効率化を支援するための、効果的なスケーラブル、かつ手頃な価格で、リモートでモニタリングできるツールを開発することでした。今回の結果はCOVID-19パンデミックに対する科学技術の勝利です。Auraが新たな発生を抑制し、人々が安全に仕事に戻り、通常の生活に戻るのを助ける上で重要な役割を果たすことができることを願っています。」
スマートウォッチを使ったCOVID-19初期症状検知で先行
スマートウォッチを使ったCOVID-19の初期症状検知のシステムは、現在、FitbitやApple Watch、Huamiなど様々なウェアラブルデバイスで研究されており、期待されている領域だ。
昨年から大規模に研究されているこのテーマであるが、スタンフォード大学が発表した2020年11月に公開された論文1)では、あくまで途中段階の研究結果をまとめたものであるが、一般的なウェアラブルデバイスを活用したCOVID-19の発症予測は、心拍や呼吸、心拍変動が、有用な指標である可能性が示唆された段階であり、まだ実用レベルでの結果は出ていない。
一方で、一般ウェアラブルではなく、今回医療グレードのウェアラブルデバイスを使ったものとして、まずはCEマークを取得することができたということになり、Empaticaは他のウェアラブルデバイスに比べて一歩先を行ったということになる。
Empaticaは現在、米国FDAの承認を取得しようという過程にあり、米国保健社会福祉省(Biomedical Advanced Research and Development Authority)とスタンフォード大学と提携して、米国の医療従事者を対象とした全国的な検証研究を実施している。
(今回参考のプレスリリースはこちら)
Fitbitなどの一般ウェアラブルデバイスを活用したCOVID-19検知の動きはこちらも参考。
参考:米国国防総省が医療用ウェアラブルでCOVID-19を早期検知するフィリップス・BioIntelliSense・コロラド大学の共同研究に資金助成
参考:スタンフォードヘルスケアイノベーションラボで行われているウェアラブルでCOVID-19を検出する研究を解説
2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。
参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~
参考文献:
1) Natarajan, A., Su, HW. & Heneghan, C. Assessment of physiological signs associated with COVID-19 measured using wearable devices. npj Digit. Med. 3, 156 (2020).
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら