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個人と企業を繋ぐデジタルヘルスプラットフォームのEvidationがシリーズEで167億円の資金を調達

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2021年3月22日、米国カリフォルニア州のベンチャー企業であるEvidation Healthが、シリーズEの資金調達ラウンドで153m$(約167億円)を調達したことを発表した。このラウンドのリードインベスターはOMERS Growth Equity、Kaiser Permanente Group Trustで、McKesson VenturesやB Capital Groupなどの既存の投資家も参加した。また、OMERS Growth EquityのマネージングディレクターであるTeresa Lee氏が、Evidationの取締役会に加わったことも明らかにした。

急成長するEvidation Healthとは

2012年に設立されたEvidation Healthは、カリフォルニアに本社を置く、急成長中のベンチャー企業である。個人と企業を繋ぐ、仮想的なデジタルヘルスプラットフォームAchievementを運営している。このAchievementは、業態としてはあまり見慣れないが、「日常生活の健康を測定し、誰もが画期的な研究や健康プログラムに参加できるようにする」コンセプトのプラットフォームとなっている。(詳細後述)

今回の調達ラウンドはシリーズEであるが、創業以来、同社が調達した金額は259m$(約284億円)にもなる。投資家には複数のデジタルヘルス関連のファンド、そして事業会社からは製薬企業のサノフィのCVCが含まれている。

デジタルヘルスプラットフォームAchievement

同社が運営しているデジタルヘルスプラットフォームのAchievementは、400万人を超える個人で構成されている。この個人は、各個人の同意の上でこのプラットフォームに登録をしており、個人が保有する様々な健康データがAchievementに入力されている。

そして、Evidationはこの個人のデータを活用して、バイオ医薬品などの企業、学術機関、公衆衛生機関、専門医協会などと協力して、実際のデータを使ったデジタルヘルスの研究開発を行う。

同社が扱う個人データとは、個人や家族・介護者らによって作成・収集された健康関連データのことを指す。ウェアラブルデバイスやスマートフォン、Web調査、アプリを通して得られるデータなどが情報ソースになるという。例えば睡眠データ、消費カロリー、空気質データ、位置データ、歩数、心拍数、アレルギーに関するデータなどが対象となっている。

同社の表現を借りると、Achievementはすでに米国の広範な範囲をカバーしており、米国50州と10の郵便番号のうち9つが含まれる。(補足:米国は郵便番号の1桁目が0~9で構成されており、州によって異なる。このことを指していると思われる)

このプラットフォームは、COVID-19やアルツハイマー病から慢性痛、呼吸器疾患まで、さまざまなトピックにわたる先駆的な実世界研究の基盤となっている。現在までで100を超える研究プロジェクトを実施してきたという。

以下に、いくつかの同社のプロジェクト例を紹介する。

https://www.youtube.com/watch?v=NXEn8d_7vxM
同社公開の動画への直リンク
ウェアラブルを使って疲労に関するデジタルバイオマーカーを抽出する取り組み

COVID-19の症状の予測アルゴリズム開発

Evidationは2020年6月に、COVID-19の症状を検出する早期警告アルゴリズムを開発するための新しい取り組みを発表。この研究は米国生物医学先端研究開発局(BARDA)から支援を受けて実施するものとなっている。

Evidationプラットフォームを通して、自己申告の症状に基づく、COVID-19を発症するリスクが高い300人における睡眠や活動パターンなどの行動を分析する。この研究は、COVID-19によるパンデミック時の人々の健康と行動動態をモニタリングする、現在進行中の15万人規模の全国的なイニシアチブ、COVID-19 Pulseに基づいている。

個人の心臓状態のモニタリング・管理方法の開発

また、個人が診療所の外でも心臓血管の健康をよく理解することを、従来より簡単にすることが目的で、2020年12月にEvidationとAmerican College of Cardiology(米国心臓病学会)は、心臓状態モニタリングのプロジェクトを共同開発で立ち上げることを発表。

初期は心不全に焦点を当てて、このプロジェクトに協力する個人は、自宅からリモートで心血管の健康に関連するデータを継続的に監視し、自分の状態を学ぶことができる。個人の許可に基づいて、アプリやウェアラブルデータなど、活動、睡眠、血圧、症状の情報をプラットフォームで共有もできる。また、参加者は、心臓薬、栄養、ストレス管理などのトピックに関する教育コンテンツや、医療提供者の訪問をサポートする患者ナビゲーションツールを受け取るという取り組みとなっている。

(今回参考のプレスリリースはこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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