2020年10月、拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR HUD)を開発する英国ベンチャーEnvisicsが50m$の資金調達を行ったと発表した。

Envisicsの今回の資金調達は、SeriesBにあたる。現代モービスがリードインベスターとして、General Motorsの子会社GM Ventures、中国の自動車OEMであるSAIC Motors(上海汽車集団股份有限公司)、米国コングロマリットのバークシャーハサウェイ子会社のVan Tuyl Groupが参画している。

Envisicsの拡張現実ヘッドアップディスプレイ

同社は拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)および自動車センサーシステム向けのホログラフィック技術を開発している。下記の動画にあるように、AR HUDを自動車のシステムに統合し、マップやナビ、危険の警告などの情報をドライバーに提示する。

公開されているYoutubeへの直リンク
CES2019で公開されたデモ動画となっている

Envisicsの創業は2018年であるが、現在のCEOであるジェイミーソン氏は2010年よりこうした拡張現実ヘッドアップディスプレイの開発を行うベンチャーTwo Trees Photonicsを設立。この会社は2015年に拡張現実ウェアラブル企業であるDAQRIに買収された。その後、自動車セクター部門だけが独立し、Envisicsとなっている。(なお、このDAQRIは2019年に閉鎖されている)

同社の技術は、位相ホログラフィとフーリエベースのコンピューター生成ホログラムによる動的ホログラフィプラットフォームを構築。従来のHUDよりも40%小さく、エネルギー効率を50%高い状態で、深さと3レーンもの横幅に広がる広い視野角の実現と、クラス最高の解像度、明るさ、彩度などの高画質を実現している。その光学系とアルゴリズムは、雨などの天候や、昼・夜の変化にも対応するロバスト性も特徴であるという。

実用化のタイムラインは?

現代モービスは、今回のプレスリリースにあたり、自動運転に特化したAR HUDをEnvisicsと共同で開発し、2025年までに大量生産を目指すという。まだ開発中のフェーズであり、本格的な市場投入には4-5年の時間軸がかかりそうだ。

また、今回のラウンドに参加したGMベンチャーズは以下のコメントをしている。
「GMは、Envisicsのホログラフィック拡張現実拡張ヘッドアップディスプレイ技術に非常に感銘を受けています。このテクノロジーは、キャデラックLYRIQなどの将来のEVでハンズフリー運転体験を強化するアプリケーションを含む、さまざまな安全で高度に統合された直感的なアプリケーションで、車載体験に革命をもたらすのに役立ちます。」(GM Ventures社長のMatt Tsien氏のコメント)

SAIC Capitalの投資ディレクターは以下のコメントをしている。
「革新的なホログラフィック技術を商品化するEnvisicsの旅に参加できることを非常に嬉しく思います。また、Envisicsと提携して、中国市場と世界市場の両方の次世代車に高度なAR-HUDを導入することを楽しみにしています。」
(SAIC Capital DirectorのMichael Cohen氏のコメント)


- 技術アナリストの目 -
自動車向けAR HUDの開発にも動きが出てきている。xR関連は注目されているものの、まだ大きな資金調達に至っているベンチャーはわずかであり、50m$もの資金調達をクローズさせたのは興味深い。先行しているように見えるWayRayなどのプレーヤーとの競争をどのように進めていくのか引き続き注目である。