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【CES2021】ボッシュ・コンチネンタル・マグナ・ZFの自動車関連発表、目玉はデジタル化シフト

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毎年様々な発表をしている欧米自動車Tier1勢であるが、今年はどうだったのだろうか。各社別に、特に自動車関連の発表に焦点をあてて整理した。

今年は電動化や自動運転などの話題が少ない一方で、車載コンピューティングの領域であるV2Iやインフォテイメントシステムなどの話が目立った。ボッシュ・ZFはソフトウェア領域やデジタル化シフトへの対応について強調し、自社がこうした領域をリードしようという意欲が見られる、印象的な内容であった。

では、各社の主だった発表を見ていこう。

ボッシュ:AIoTをコンセプトに新組織を組成し、モビリティソリューションを開発

ボッシュはCES2021の講演・プレスリリースの中で、しきりにAIoTというコンセプトを提唱していた。これは「データ、AI(人工知能)、モノのインターネット化が提供する可能性を活用した技術的なソリューション」であり、これまでのIoTに加えてAIとデータを加えたものだと言える。

デジタル化に注力するため、車載コンピューターの新組織が始動

今回のCES2021の発表の中で、ボッシュはこのAIoTの流れから、モビリティの電動化、自動化、パーソナライズ化およびネットワーク化サービスの組み合わせを強化するべく、新組織が始動したことに触れている。この新組織が始動したのは実に2021年からだ。

車載コンピューターを強化するために、従業員17,000名をクロスドメインコンピューティングソリューション事業部として集約。この車載コンピュータードメインの注力については、2020年7月に同社から発表されており、計画通りに2021年から始動しているようだ。ボッシュは、年間30億ユーロを車載コンピューティングに投資をするという。

同社は講演の中で、2010年には自動車に約1,000万行のソフトウェアコードが含まれていたが、今日の自動運転車のソフトウェアはすでに1億行のコードで実行されており、ソフトウェア領域の強化が大事であると触れている。

画像クレジット:Boschプレスリリース

バッテリー・イン・ザ・クラウドでバッテリーの消耗を20%低減

今回のAIoTのコンセプトを体現するアプリケーションの1つとして、バッテリー・イン・ザ・クラウドについても触れている。これは2019年7月に発表されていたコンセプトであり、現在も進行中であることが確認できた。

これは、電気自動車のバッテリーをクラウドに接続し、スマートなアルゴリズムを用いて、バッテリーの負荷要因を認識し、充電プロセスを最適化するものである。電気自動車のドライバーは、このスマートソフトウェア分析を使用してバッテリーの消耗を最大20%低減できる。

米国初のV2Iとなる自動バレーパーキングソリューションのデモ

同社はまた、講演の中で米国初のV2I(Vehicle to Infrastructure)となる、都市部の駐車場における自動バレーパーキングソリューションの取り組みも、このAIoTの一環であると触れている。

この自動バレーパーキングソリューションは2020年9月から実演されており、フォード・モーター、ベッドロック、ボッシュの3社で開発されている。

これは、フォードのネットワーク化されたテスト車両を用いて、ボッシュの駐車場インフラと車両で通信を行い、自動駐車動作を行うものとなっている。

コンチネンタル:透明トレーラーや新型レーダーで3つのアワードを受賞

コンチネンタルは今回のCES2021において、透明トレーラー、新型4Dレーダー、Sennheiserとの協業による没入型サウンド体験という3つの製品でイノベーションアワードを受賞している。

透明なビューで安全性を高める透明トレーラー技術

画像クレジット:Continentalプレスリリース

この技術はドライバーがトレーラーを運転中に、2台のカメラとコントロールユニットを連携させることで、あたかもドライバーの背後と側面の領域が透明であるかのように、ビューを提供する。ドライバーは周囲の障害物を容易に確認することができるようになる。

量産対応の4Dイメージングレーダー

画像クレジット:Continentalプレスリリース

これは2020年9月に発表された、米国シリコンバレーのプロセッシングユニットを開発する大手企業ザイリンクスとの協業で開発している新しいレーダーだ。

従来のレーダーは、距離、速度、方位角に関する情報しか取得できないが、同社が開発しているARS 540長距離レーダーセンサーは、距離、速度、方位角に加え、高度も使い、オブジェクトの位置を計算して、正確なマッピングを行うことができる。

没入型サウンド体験

画像クレジット:Continentalプレスリリース

Sennheiserとの協業により開発されたこの没入型サウンドシステムは、昨年のCES2020でも出展されている。従来のスピーカーは使わないで、表面を刺激する小型で軽量のアクチュエーターに置き換えている。これは、音に囲まれたコンサートホールに座っているような、非常に自然な音体験が可能にすることを狙っている。この技術は、重量とスペースを最大90%削減できるという。

マグナ:発表の多くが電動化、特にLGとフィスカーとの協業をアピール

マグナは2021年1月から新しくCEOになったSwamy Kotagiri氏が講演に登場。同氏は講演の中で、多くの時間をマグナがどのように電動化に取り組んでいるか、ということについて説明をしていた。

画像クレジット:CES2021での映像より、CEOのSwamy Kotagiri氏

そして、講演の中ではLGエレクトロニクスCEOのKwon氏も登場。2020年12月に発表を行った両社によるジョイントベンチャーについても説明をしている。このJVは電動モーター、インバーター、車載用充電器を製造する会社として設立される予定で2021年7月に完了する予定だ。

また、フィスカーとの提携についても触れている。フィスカーとの提携は2021年1月4日に発表されており、共同でADASを開発し、2022年後半に予定されているフィスカーOcean SUVで搭載する計画だ。

ZF:今回のテーマはソフトウェア、新開発のミドルウェアを初公開

画像クレジット:ZFプレスキット

講演の中で、次世代の戦略の中のキーワードとして「Digitalization(デジタル化)とソフトウェア」を挙げている。同社が1月5日に発表したプレスリリースによると、「ソフトウェア定義された車というのは、車輪に乗ったスマートフォンという位置づけを超える」と言及している。

同社はこの戦略の一環として、ZFミドルウェアというオープンソフトウェアについて発表した。これは車両に搭載されているコンピュータの動作を仲介する機能を持つ。このミドルウェアは2024年から利用可能であり、自動運転や統合された安全機能、車両の動きなどの制御、電動化などのアプリケーションで利用可能となる。

今日では車両には最大100ものECUが搭載されており、将来の車両プラットフォームでは、電気・電子アーキテクチャ(E / Eアーキテクチャ)は劇的に変化する。自動運転では分散型コントローラーから専用ドメインコントロールユニットが数台しかない集中型システムへ移行していく。こうした市場変化を狙って、同社はミドルウェアを展開していくという。

非常に興味深かったのは「破壊的な変化というのは、とても穏やかに進行する」という同社の講演の中でのコメントだ。同社の講演からは、だからこそ今から先手を打ってソフトウェア領域に力を入れるという決意がわかる内容であった。



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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