デンソーとAevaが次世代LiDARの開発で提携
デンソーは自動車向けの4D LiDARセンサーを開発する米国のスタートアップ企業Aevaとの提携を1月19日に発表。周波数変調方式(FMCW)のLiDARを共同で開発する。
FMCW 4D LiDARを開発するAeva
2017年に元アップルのエンジニアによって立ち上げられた、シリコンバレーベンチャーであるAevaは、指先に乗るサイズの4DチップLiDARを開発している。いわゆる従来からあるToFのLiDARではなく、周波数変調方式(FMCW)でのLiDARを開発している。
Aevaは現在、SPACによる上場を発表し、現在上場に至るためのプロセスの過程にある。なお、直近1月4日には、SPACで追加する予定だった資金に200m$を加えたことが明らかになっている。これで同社がSPACで上場する一連の動きで確保する資金は、合計で563m$になった。
参考記事:SPAC上場を予定している4D LiDARを開発するAevaが上場前に200m$の資金を調達
従来LiDARで使われているToF(Time of Flight)とは、赤外線LED(良く使われるのは905nm)の光源を物体に照射し、反射波を読み取るまでの時間を元にして、距離を算出する。この905nmでのToFでは、CMOSや他のシリコンディテクタによって検出可能であることから、システム構成を複雑なものにする必要がないというメリットがある反面、強度の高いパルスを照射しなければならないことや、高出力にするとアイセーフティが懸念されるといった課題があった。(参考文献 ※1, ※2)
一方で、FMCWは以前よりミリ波レーダーで使われてきた手法である。時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波を連続的に照射し、送信波と反射波の周波数差から距離を求める。このFMCWの良いところは、ToFに比べて感度を高くすることができ、LiDARの他の反射波の干渉や、雨や霧といった影響も受けにくい。また、この方法ではドップラーシフトから対象物の瞬間速度も割り出すことができる。そのため、4D LiDARという表現がされる。一方でToFに比べると高い演算能力が求められることがこの方式の課題となっていた。
Aevaは独自のシリコンフォトニクス技術により、1つの小さなチップに収めることに成功。検出距離は250m(反射率10%、HP上は300mとなっているが、反射率10%では250mであるため、こちらの方が自然)であり、視野角はFOV水平120°×垂直30°となっている。
デンソーは近年内製化から他社との協業に方針を切り替えていた
デンソーは2020年にトヨタ自動車と合弁会社「ミライズテクノロジーズ」を設立。これは次世代のモビリティ半導体を開発する新会社であり、この中でミリ波レーダーやLiDARの開発も行うと発表していた。
そして、2020年のデンソーのアニュアルレポートの中で、ミライズテクノロジーズのセンサ開発において、LiDARを海外のベンチャー企業と協業で開発することに触れていた。
これまでデンソーはLiDARを内製で開発してきており、新会社でもNEDOのプログラムで開発したSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を受光部にした技術を使うと想定されたが、内製化からコア技術を他社から調達することに切り替えたことになる。
AevaはZFとも提携、ポルシェも出資
一方でAevaは2020年9月にはZFとの提携も発表しており、ZFはAevaの4D LiDARチップを使い、大量生産化に取り組んでいる。またAevaのIR資料によると、戦略的パートナーとしてもう1, 2社想定しているようであり、ZFやデンソー間でどのように住み分けるのかは不明だ。
また、世界最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲングループのポルシェも2019年12月にAevaに出資をしており、こうした関係もどのように整理されるのかは現時点では不明である。
MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。
参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~
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参考文献
※1 自動運転車市場向けのフォトニクスガイド
※2 競合形態が多い自動運転車向けライダ
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