4月19日、リチウム金属を使った電池を開発するベンチャー企業のSolid Energy Systems(ソリッドエナジーシステムズ:SES)がシリーズDの資金調達ラウンドを実施したと発表。

今回の資金調達ラウンドのリードインベスターはゼネラルモーターズ(GM)であり、既存投資家である韓国のSK Inc.、シンガポールの政府系ファンドTemasek、半導体製造装置大手AMATのCVCであるApplied Ventures LLC、Shanghai Auto(SAICのことだと思われる)、VCのVertexが参加した。

今回の資金調達ラウンドで調達した金額は1億3900万ドル(約150億円)となる。

SESの創設者兼CEOであるQichao Hu氏は、次のように述べている。
「この新しい資金調達は、技術開発を加速し、技術、ビジネス、製造チームを大幅に拡大し、リチウム金属電池の商業化を促進するのに役立ちます。」

SESは先月、GMと新しい共同研究開発契約を締結したことを発表した。今回の資金調達ラウンドはその共同R&D契約に続く発表となった。両社の合意の一環として、GMとSolid Energy Systemsは、マサチューセッツ州ウォーバーンに、2023年までに大容量の試作バッテリー用の製造プロトタイピングラインを建設することを計画している。

(補足)なお、SESの電池は液体電解質を使ったリチウムイオン電池であり、負極に従来のグラファイトではなく、リチウム金属を使ったものであり、全固体電池ではない。

SESの技術の詳細はこちらで解説をしているが、同社の独自性は高リチウム塩濃度の電解質を用いたアプローチとなっている。重量エネルギー密度で400~500Wh/kgを目指すとしている。

参考:GMが提携したリチウム金属電池ベンチャーのSolid Energy Systemの解説

また、今回の調達ラウンドをリードしたGMのエグゼクティブバイスプレジデントであり同社CTO、かつGM Ventures社長のMatt Tsien氏はこう述べる。
「GMはバッテリーセルのコストを急速に削減し、エネルギー密度を向上させてきました。SESテクノロジーとの連携により、より広い範囲をより低コストで求めている顧客に、さらに優れたEVパフォーマンスを提供できるという信じられないほどの可能性があります。GMや他のによるこの投資は、SESが彼らの仕事を加速し、彼らのビジネスを拡大することを可能にするでしょう。」

(今回参考のプレスリリースはこちら


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像を知りたい方はこちら。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


ー 技術アナリストの目 -
SESがシリーズDで150億円を調達しましたが、今回のリードインベスターはGMでした。GMは以前からSESに出資をしていて、両社の関係は2015年から長く続いていますが、今回改めてシリーズDのリードインベスターとなることで、GMがリチウム金属を使ったLIBに本格的に資金とリソースを注いでいることを裏付けることになりました。前回の記事でも触れていますが、2023年までに大容量の試作バッテリー用の製造プロトタイピングラインを建設するということなので、もし順調に開発が進んだ場合、量産での実用化の時間軸は2024年以降になるかと思います。

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