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自動運転トラックを開発する智加科技(Plus.ai)がSPACでニューヨーク証券取引所に上場

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自動運転トラックを開発するPlusが、SPACのスキームを活用してニューヨーク証券取引所に上場することが、5月10日明らかにされた。米国新興市場のナスダックに上場しているHennessy Capital Investment Corp. V(HCIC V)と合併し、ティッカーシンボル「PLAV」で取引される予定。

レベル3・4の自動運転トラックを開発

シリコンバレー発中国ベンチャー

Plus.aiは2016年創業のシリコンバレーに本社があるベンチャー企業である。CEOは中華系のDAVID LIU氏で、資本も米国資本だけでなく中国資本も多く入っていることから、智加科技という中国企業名も持ち、米国市場と中国市場を狙っている。

2021年3月にシリーズDが行われたばかりであり、シリーズDでは200億円を超える資金を調達。これまで同社へ出資をしているのは、大手VCのセコイアキャピタルや、
Lightspeed Venture Partners、中国自動車大手の上海汽車集団(SAIC)のCVC、中国のコングロマリット企業である万向集団のCVCなどとなっている。

トラック向け自動運転システムを今年量産開始

Plusはレーダー、LiDAR、カメラを搭載し、HDマップとディープラーニングを組み合わせた大型トラック向け自動運転システムPlusDriveを開発している。

この自動運転システムPlusDriveは2021年内に量産を開始する予定となっており、米国と中国の市場において、何千ものユニットがすでに事前注文されている。また、一汽解放汽車(FAW Jiefang Automotive)と共同開発した自動運転レベル3のトラック「FAW J7L3」も、今年から量産を開始することになっている。ちなみに自動車の目として重要なキーコンポーネントであるLiDARは、OusterとLivoxをパートナーとして提携している。

Ouster・Livoxについてはこちらを参考:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~

同社が開発するこのPlusDriveは新規のトラック車両だけでなく、既存のトラックにも搭載することができる。機能は無線アップデートを使って、今後強化されていく見込みだ。

2024年末までに自動運転レベル4を実現する計画

さらに発表では、Plusは今後数年間で数万台の監視付き自律型トラックを供給するための明確なロードマップがあることが明らかにされた。2024年末までにレベル4自律走行トラックの供給を行う予定であるという。

なお、同社はPlusDriveをレベル4自律走行システムとして言及しているが、今年の量産化当初からいきなりレベル4自律走行を実現するわけではなく、あくまで最初は運転を支援する安全な運転システムという位置づけであり、実環境の膨大な走行データを蓄積し、機能の改良と安全性の証明を行いつつ、2024年末までにレベル4を実現する計画である。

やや表現がわかりにくいが、同社は現在の自動運転システムPlusDriveをSL4(Supervised Level 4:監視付きレベル4)と呼んでいる。これはレベル4であってもドライバーの監視が必要である、ということから来ているようだ。同社のロードマップによると、2021年時点では高速道路の本線のみで使うことができ、かつハンドルに手を置き、ドライバーは運転に注視した状態である必要がある。そして段階的にアップデートし、2022~23年時点ではドライバーは運転中に目を離しても良いアイズオフ状態を実現し、2024年以降にレベル4自動運転を実現する。つまり、当初は実質レベル2+から始まり、段階的にレベル3、レベル4と自律性を上げていくという形を想定しているようである。

ちなみに、この自動運転レベル4トラックの量産化に向けたタイムラインは競合のTuSimpleとほぼ同様であり、TuSimpleも2024年に自動運転レベル4トラックの量産化を計画している。

参考:自動運転トラックのTuSimpleがナスダックにIPOを申請

SPACを通して最大約5億ドル(約543億円)を調達

今回の合併は、2021年1月の新規株式公開から、HCIC Vの信託口座に保有された約3億4500万ドルの現金を含め、決算時に最大約5億ドル(約543億円)の総収入をもたらすと予想されている。(HCIC Vの公募株主による償還がないと仮定した場合)

また、一連の取引は2021年の第3四半期に終了する予定となっている。

そして同社の売上高の計画を見てみると、他のSPACスキームを活用している企業と同様に非常にアグレッシブだ。特に特筆すべきは米国・中国市場が対象となっているが、圧倒的に中国での事業規模が大きいと見込んでいる点である。

Plus.aiの売上高見通し

同社投資家向けプレゼンテーション資料より筆者作成

(補足)ただし、SPACで上場している最近のモビリティ関連企業(アーバンエアモビリティなども含む)を見ていると、その計画がどこも非常にアグレッシブすぎて、「Plus.aiに限らず」見通しについては実際には不透明な部分が多い点は触れておきたい。特に自動運転の市場は現時点ではまだ法整備が追いついておらず、果たしてイニシャルコストが高いと想定されるレベル4自動運転トラックが、市場から、そして法規制側でもどのように受け止められていくのか、公道実験の枠を超えた時に事業計画としてどう織り込んでいくのかは非常に難しい問題である。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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