自動運転ベンチャーのPony.aiがLuminarのLiDAR搭載に向けた提携を発表
5月10日、中国の自動運転ベンチャーであるPony.aiがLuminar TechnologiesのLiDARを採用し、共同で新しく設計されたセンシングプラットフォームを開発することを発表した。
2023年から自動運転車両を生産するPony
Pony.aiは2016年に設立された中国の自動運転ベンチャーであり、トヨタやオンタリオ州教職員年金基金、セコイアキャピタルチャイナ、IDGキャピタル等から出資を受けている。2020年2月にトヨタからシリーズBで400m$(約437億円)を調達し、同年11月にはシリーズCで267m$(約291億円)の資金を調達。同社の時価総額は現在53億ドル(約5,795億円)にも上る。
このPony.aiは2023年に自動運転車両の生産を開始し、グローバルに展開する計画を持っており、次世代モデルの車両ではLuminarのLiDAR「Iris(アイリス)」をシームレスに統合する。マルチセンサーで360°をカバーし、車両のルーフからわずか10cmの位置にあるスリムなルーフラインとなる。
Pony.aiのCEO兼創設者のJames Peng氏は「Luminarとの提携は、Pony.aiが次世代システムを構築し、大規模なシリーズ生産に備えるための重要なマイルストーンです。」と述べている。
ポリゴンミラーステアリングのLiDAR
Luminarはポリゴンミラーを用いたビームステアリング走査機構を持つLiDARを開発している。昨年からだけでもVolvo Cars、Mobileye、SAIC、Daimler Truckらと相次いで提携を発表し、今回Pony.aiでも搭載に向けた開発提携に至った。
Luminarが開発しているLiDAR「Iris」はルーフライン統合のために横にスリムなサイズでデザインされており、高精細×長距離検知を実現、1万台~100万台超の自動車向けの低コストパッケージとなっている。水平FOVは120°であるため、360°をカバーするには複数のセンサーを搭載する必要がある。
スペックの概要は以下だ。
- 最大検出距離:250m(反射率10%時) | 500m(反射率前提無し)
- 解像度:~300pt/sqdeg
- FOV(水平×垂直):120°×30°
- 生産開始予定:2022年~
光源においては、従来使われている905nmではアイセーフティの問題から高出力にすることが難しいが、同社は1,550nmのファイバーレーザーを使い、より強力な光を照射することで長距離での高精細検知を実現する。また、独自設計のInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)のレシーバーを使う。なお、この手法は先日発表されたArgo AIがPrinceton Lightwaveの技術をベースにして開発したLiDARと同様のものとなっている。
前述したように、Luminarは機構部分にポリゴンミラーを使い、ビームステアリングを行う。水平FOVは120°であり、いわゆるモーターで360°回転するメカニカル方式とは異なる。このミラー部分にMEMSミラーを使ったものがMEMS方式と呼ばれるが、MEMSは共振デバイスであり、反射箇所次第でスキャンが正確ではないことがあるという1)。また、ソリッドステートとして扱われることが多いが、厳密にはMEMSミラーも可動部はあり、強度が弱いことも欠点となっている。
他のMEMS LiDARと比べてLuminarのLiDARはその検出距離やFOVにおいて優れた数値を出している。Luminarは2022年以降に生産するモデルでLiDAR1台あたりのコストを1,000ドル未満を実現することを目指しているとされており、目標は500ドルとなっている。
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