また空飛ぶ車・eVTOLを開発するベンチャー企業がSPACで上場する。英国で設立されたVertical Aerospaceは、Broadstone Acquisition Corpと合併してニューヨーク証券取引所へ上場するプロセスに入っていることを発表した。

同社の発表によると、今回の取引はプロフォーマベース(見積もり上の)の株式価値で2.2b$(約2413億円)となる。一連の取引は2021年後半に完了する予定だ。

5人乗りの大型機セグメント

Vertical Aerospaceは2016年に英国ブリストルで設立されたベンチャー企業だ。2017年には最初のデモンストレーション用機体VA-X1を発表し、2018年には民間航空局から飛行許可を得ている。2019年にはハネウェルと提携し、2020年に第四世代の機体であるVA-X4を発表している。

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最新機体のVA-X4の外観がわかる

このVA-X4は1名のパイロットと4名の乗客を乗せる、5人乗りの大型機だ。最大飛行スピードは200mph超で、最大160kmの距離を飛行することができる。合計8個のローター、固定翼、V型尾翼を備えており、低騒音飛行(※1)が可能とされている。独立した手荷物室・スペースがあることも特徴だ。

(※1)同社によると、同等のヘリコプターよりも30倍静かな騒音レベルを達成できるという。

ハネウェル・ロールスロイス・アメリカン航空らが出資

今回の一連の取引において、ハネウェル・ロールスロイス・アメリカン航空、Avolon(リース企業)も出資を行っていることも明らかになった。ハネウェルは同社のフライトコントロールを、ロールスロイスはパワートレインで提携する。またデジタル面ではマイクロソフトも同社を支援しているという。

最大1,000機のeVTOL予約注文

さらに、今回の取引に合わせてVertical Aerospaceは最大1,000機のeVTOLの予約注文が入っていることも発表した。

今回出資を行っているアメリカン航空は、最大250機の事前注文に同意しており、さらに100機の購入オプションを保有している。また、リース会社のAvolonは最大500機の電気eVTOL航空機を注文することを明らかにしている。

Avolonは、新たに設立された関連会社であるAvolon-eを通じて、VA-X4を購入する。適切な運用、配送、ビジネス要件が満たされることを条件として、2024年後半から納入が開始される見込みだ。これは12億5,000万ドル相当のeVTOL注文であり、追加のオプションで最大7億5000万ドルの追加eVTOLを購入可能となっている。

2024年から量産見込み

同社のロードマップによると、2021年内にVA-X4の初回フライトを実施し、2022年以降継続的に飛行試験を重ね、設計組織承認(DOA)、生産組織承認(POA)を得て、2024年までにCAAおよびEASAによるVA-X4の型式証明を得る計画だ。

VA-X4の納品も2024年からを想定しており、順調に進めば2024年から量産が開始する。

今年、フランスのパリで設立されたUAM(都市エアモビリティ)の業界イニシアティブにおいて、VolocopterやEHangらと同じく車両製造セグメントで参加しており、2024年のフランスパリで開催される予定のオリンピックとパラリンピックでデモンストレーションも行われるという。

 

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ー 技術アナリストの目 -
SPACによる上場もありますが、eVTOLの予約注文の動きも加速してきたと感じます。各社ロードマップはほとんど2024年~2025年あたりでの量産開始が想定されており、すでに先行して受注・座組みが始まっています。参入を狙うリース会社やサービスオペレーター、および商社やSIerなどにとっても、具体的なパートナー選定のタイミングと言えそうです。

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