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メンタルヘルスケアプラットフォームのTalkspaceがSPACで上場

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メンタルヘルスは世界的に疾患人口が多く、何かしらメンタルヘルスの症状を持つ人口は世界で実に7.9億人も存在しており、世界の10人に1人の割合であるという1)。Talkspaceはそうしたメンタルヘルス領域で、患者と臨床医を簡単に結び付けて、リモートで手軽にケアを受けることができるプラットフォームを構築している。

同社は、特別目的買収会社のHudson Executive Investment Corp. ("HEIC")との合併を完了し、米国新興市場のナスダックに上場して6月23日から取引を行うことを発表している。

バーチャルメンタルヘルスケアプラットフォーム

Talkspaceが構築しているのは、メンタルヘルスの患者が臨床医やセラピストと繋がり、ケアや診察を受けることができるバーチャルなプラットフォームだ。専用のアプリを使った、モバイル・デスクトップデバイスで完結するリモートケアである。

Talkspaceを利用するユーザーは専任のセラピストにテキスト、ビデオ、音声メッセージをいつでもどこからでも送信したり、ライブビデオセッションに参加することができる。セラピストは資格を持った専門家であり、信頼性の担保に重点が置かれている。

同社のユーザーからの声を引用すると、セラピストとのマッチングがユーザーに評価されている1つのポイントのようである。「マッチングプロセスは驚異的であり、プロセス全体を通して自分の要望やニーズが聞かれたと実感しました。」(同社のユーザー満足度調査2020)

同社のバーチャルなアプローチは臨床的にも効果的であることが証明されており、12週間に渡り不安とうつ病を患う10,000人の参加者を対象とした効果検証で、参加者の50%が完全に回復し、参加者の70%は著しい状態の向上を見せたという。

また、このバーチャルプラットフォームは、昨今健康経営において注目されているプレゼンティーズムの向上にも寄与することが示されている。プレゼンティーズムとは「健康の問題を抱えながら業務を行っている状態」であり、生産性の低下との関連性が指摘されている。バーチャルプラットフォームを利用した51人の従業員を対象とした臨床実験では、多くの従業員がより活気があり、生産的で、従事していると感じたと報告している2)

2021年5月の時点で、200万人以上がTalkspaceを使用しており、保険や従業員支援プログラム、その他のメンタルヘルスプログラムを通じて提供されている。

売上はCAGR62%で急拡大

同社のサービスはすでに過去から有償で提供されており、現在の売上は2020年で76m$(約84億円)にも上る。下記の図を見てわかる通り、2017年から2020年で年平均成長率は62%を記録し、急成長を継続している。また、今後の売上も計画上は成長を続ける見通しとなっている。

Talkspaceの売上高推移と今後の計画

同社公開資料より当社作成

同社のビジネスモデルはBtoCとBtoBモデルがある。

BtoCはユーザーが直接、アプリを利用して臨床医やセラピストからカウンセリングを受ける。料金体系は、1週間ごとの機能利用によるサブスクリプションモデルだ。例えばセラピストと繋がりテキスト・ビデオ・オーディオメッセージでやり取りできる基本的なプランで65$/週となっており、リアルタイムのライブビデオでカウンセリングを受ける場合は回数によって金額が高くなる。さらに、精神科医から診察を受けて処方されるためには、最初のコンサルテーションで199$、フォローアップで125$となっている。

そしてBtoBモデルでは、従業員のメンタルヘルスケアのために、企業と契約している。クライアントは70社を超え、GoogleやAccentureら大手企業が名を連ねている。2019年第一四半期には契約者数はわずか2社であったが、2年足らずで一気に拡大した。

今回のSPAC上場を通して得た資金を活用して、今後は、ユーザーベースの拡大、パートナーシップの追加、およびグローバルでの事業拡大を行っていく。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


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参考文献:

1) Hannah Ritchie and Max Roser (2018) (Our World in Data)

2) DellaCrosse, M., Mahan, K. & Hull, T.D. The Effect of Messaging Therapy for Depression and Anxiety on Employee Productivity. J. technol. behav. sci. 4, 1–5 (2019). https://doi.org/10.1007/s41347-018-0064-4


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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