英国の自動運転システムを開発しているベンチャー企業のOxboticaが主導する、英国で実施されている自動運転実験「Project Endeavour」が、ロンドンでのデモンストレーションで、プロジェクトが終了したことが発表された。

プロジェクトエンデバーとは?

プロジェクトエンデバー(Project Endeavour)とは、英国における自動運転車の都市部への早期展開を狙い、設立されたコンソーシアムだ。2019年3月に開始され、今回のロンドンでの実証で完了となった。コンソーシアムの活動資金は、Center for Connected and Autonomous Vehicles(CCAV)が一部資金を提供し、Innovate UKと提携して提供されており、公共部門と民間部門による産官の共同体で構成されている。

  • Oxbotica(自動運転システム・ソフトウェア開発)

2016年には、英国の公道で自動運転車をテストした最初の企業となった自動運転ベンチャー。特にソフトウェアアプローチに強く、HDマップを使わないスケーラブルなシステムを開発している。

今回のプロジェクトをリードしている自動運転システムの開発主体。

  • DG Cities(モビリティ評価フレームワークの開発、サービス設計)

地方自治体から生まれた私たちのチームであり、スマートシティと次世代モビリティの統合のための計画策定や、エネルギー政策や都市のデジタル化などを支援するコンサルティング会社。

今回のプロジェクトでは、パブリックエンゲージメント、スムーズなトライアルロールアウトを保証するための利害関係者との調整、運輸当局がモビリティサービスを評価および比較できるようにするモビリティ評価フレームワークの開発とサービス設計を主導している。

  • Immense(フリートマネジメント・交通需要シミュレーション)

自動車メーカー、フリート事業者、交通機関、エネルギー・プロバイダーなどのグローバルなモビリティ関連企業のコストを削減する、フリートマネジメントや都市交通需要のシミュレーションなどを手掛けている。

今回、同社のプラットフォームを活用し、効果的にトライアル展開を横展開していくことをサポートしている。

  • TRL(Vehicle-to-Grid)

1933年に交通研究所として設立された。EUの一般安全規制や、「Vehicle-to-Grid」デモンストレーションプロジェクト、およびロンドンのSmart Mobility Living Labなどのプロジェクトに取り組んでいる。

今回のプロジェクトでは安全性とコンプライアンスの専門知識を提供している。

  • BSI(安全コンプライアンス評価フレームワーク)

航空宇宙、自動車、建築環境、食品、ヘルスケアなど、産業分野に特化して、規格や標準化を支援するコンサルティング会社。今回のプロジェクトでは、安全コンプライアンス評価フレームワークを策定している。

  • Oxfordshire Country Council(計画策定と住民への公的サービス提供)

オックスフォードシャー群の公共部門(地方自治体)である。今回のプロジェクトでは、パートナーと協力して、オックスフォードシャーでのパイロットの展開をサポートするためのオンボーディングを行った。

ロンドンのグリニッジ区5マイルの都市ルートで実証

これまで、最初の実証はオックスフォードで実施され、次にバーミンガムで実施され、最後の実証がロンドンのグリニッジ区での実施となる。5マイル(約8km)の短いエリアであるが、6台の自動運転車両を使い、70人の一般市民が路上デモに参加したという。

Project Endeavour公開の動画への直リンク

GPSやHDマップを使わないシステムを開発するOxbotica

今回のプロジェクトを主導しているOxboticaは、2014年にオックスフォードロボティクスインスティテュートからのスピンアウトで設立されたベンチャー企業だ。

Oxboticaが開発しているシステムは、事前にインストールされたGPSやHDマップを必要とせず(プリインストールして使うことも可能ではある)、特定のセンサーシステムにも依存しない、柔軟性の高いフルスタックの自律走行ソフトウェアを開発している。

レーダー、レーザー、またはビジョンセンシングを使用することができ、クラウドベースの自律管理システムで、フリートの制御や管理を行うことができる。

GPSを使うことを前提としていないため、GPSの信号が弱い(または全く無い)ような地下や屋内、そして峡谷や森林、GPSを乱す高層ビルが多いエリアなどでも問題無く自律走行を実現することができる。

そのため、同社がターゲットとしているのは必ずしも一般乗用車ではなく、産業用途でも展開しようとしており、今年1月にはシリーズBに石油大手のBP傘下のBPベンチャーズが出資をしている。BPは自社の製油所で、製油所の操業を監視するための最初の自動運転車の配備としてOxboticaの技術をテストしており、同社との関係を強化している。

 

OxboticaのHPはこちら


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参考:(特集) 社会実装が始まる世界のロボタクシー市場動向


ー 技術アナリストの目 -
今年のCVPR2021でもOxboticaがプレゼンテーションをしていましたが、そのソフトウェアアプローチによる柔軟な自動運転システムは、自動運転業界でニッチで独特なポジションにいます。今回のProject Endeavour自体は、中国深圳・北京や、米国のサンフランシスコと比べるとやや取り組みとしてはゆっくりとしており、小規模なので、そこまで先進的な事例ではないですが、Oxboticaの活動は今後、どのような分野で短期的にマネタイズできるのか、注目していきたいと思います。

【世界の自動運転プロジェクトの調査に興味がある方】

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