1月7日よりCES2024がメディア向けに始まっており、筆者は8日からのプレスカンファレンスに参加し、本日9日はプレスカンファレンスを回りながら、各ブースを回って取材を行った。

早速であるが、自動車関連を中心に回ったので、雑記形式で現時点でどうだったのか感想を書いてみたい。なお、事実については大手メディアが報じていると思うので、ここではあくまで感想メインで述べていく。

なお、プレビューについては以下にまとめている。

参考記事:CES2024の見どころ(CES2023を振り返りながら)

注)なお、当社が技術調査・コンサルティングで支援をしている企業が自動車関連とデジタルヘルス関連が特に多いことから、今回のCESはこの2つの分野を中心に回りつつ、他のロボットや重機械などの分野もカバーすることを想定している。

様々な企業が新しい取り組みを発表

初日と2日目で回った以下のプレスカンファレンスを取り上げている。

  • Volkswagen
  • Bosch
  • Valeo
  • Hyundai
  • Ottonomy ※自律配送ロボットベンチャー
  • Sony / Honda
  • MIH(Foxconn)

大変残念ながら、午前に回ることを予定していたSK Hynixは入場ができなく、また昼に回ることを予定していたAbbottはなんとプレゼンテーションは無しであった。

また、ブースについては現時点では自動車メインで回っており、LiDARや4Dイメージングレーダー、自動運転AI、シミュレーションなどの様々な企業のブースを回り、10数社の関連企業を取材している。こちらについては後日、動向レポートとしてまとめて販売する予定だ。

全体的にAI・ソフトウェアの存在感が拡大、水素も強調

Volkswagen:LLMを搭載したバーチャルアシスタント

フォルクスワーゲンのプレカンの様子

朝8時から一発目となったVolkswagenであるが、裏ではLGの講演が行われていた。自分はVolkswagenに参加しているため、LGはあとで講演をチェックすることにする。

さて、Volkswagenであるが、LLM(ChatGPT)を搭載したバーチャルアシスタントであった。Cerenceとの協業が発表されたが、Cerenseについては、In-Cabinの音声認識で有名な企業であり、以前Affectivaの顔認識とCerenseの音声認識を合わせて、顔と音声によるマルチモーダルな感情認識を行う取り組みも発表されていた。

今回は音声+AI(ChatGPT)となったわけであるが、他の自動車メーカーからも生成型AIの採用が発表されていることから、In-Cabinの音声アシスタントのデフォルトになりそうな勢いもある。しかし、デモンストレーションを見たが、正直な感想としては、どこまでこの生成AI・Generative AIがユーザー体験を高めてくれるかはまだ不透明だ。

筆者も昨年、ChatGPTを使いこなすために、エンジニアと一緒に日々の業務の自動化を目的に開発を行い試行錯誤をしてきたが、ChatGPTが有効な状況というのは優良なインプットを与えた場合に、その内容をサマライズしたり、または一般的なKWを元にアイディエーションをするのに長けている。一方で、調べものをしたりするのは不得意だ。最もそうな回答を得ることができるが、信頼性は明らかに欠ける。そのため、デモンストレーションで示されていたようなレストランを探させたりするような「調べる行為」というのは、必ずしもChatGPTの強みにマッチしないだろう。もちろん、それらしい自然な会話を演出するという効果はあるが。

この生成AIは2023年10月に新しく発表されたガートナーのハイプサイクルでは、「過度な期待」のピーク期にあるとされる。どういう価値をもたらすかは、まだこれから明らかになるのではないか。

Bosch:持続可能なエネルギーを全面に押し出す

Boschのプレカンの様子

昨年は様々なウェアラブルやIoT機器に搭載されるMEMSチップ、そして個人への最適化を果たすためのAIについてのプレゼンが特に印象に残っている。

今年は「持続可能性のためのエネルギー」を全面に押し出したプレゼンだったと言える。ポイントはエネルギー効率化と水素である。

エネルギー効率化の部分で目を引いたのはSiC(炭化ケイ素)だった。

SiCは現在、まだ成熟したSiに比べてコストは高いものの、航続距離を延ばす技術として、主要企業各社が取り組んでいる。中国では6インチ基板を中心に2025年あたりには大量生産工場が次々と稼働する動きが出ている。BoschがSiCチップに今後数年で1.5b$もの投資を行っていくというのはSiCに対して本気の姿勢であることが伺える。

SiCチップの取り組みについて触れる

次に出てきたのは水素・Hydrogenである。今回実は、Hyundaiのプレスカンファレンスも水素一色であり、Doosanでも水素の取り組みが強調された。水素というのは今年強調された1つのキーワードだろう。

水素についてはかなり強調されていた

Valeo:ADAS・自動運転の普及促進とソフトウェアの取り組み

ValeoはADASの民主化、というキーワードが耳に残る。2030年までに約90%の自動車にADASが搭載されることを狙う。また、2030年までにLevel3・4の自動運転機能を搭載した車両を300万台にすることを達成するとした。

ValeoはずっとLiDARで先行してきており、SCALA3について発表されるかと思ったが、どちらかというとソフトウェアの側面についての取り組みが多かった。AIベースのパーセプションや、自動運転機能の開発を加速するためのデジタルツインの取り組みなど。やはり開発のスピードを速めるためにシミュレーションやバリデーションをどのように行うか、そのあたりはソフトウェアの力量が重要になるということか。

なお、ナイトビジョンでFLIRと協業とのこと。あまり普段アピールされることは少ないが、夜間の冗長性を高めるためにロボタクシーでも赤外線カメラを取り入れている企業が散見されている。ハンズフリー、そしてその先のアイズオフについて、ODDを拡げていこうとすると更なる冗長性が求められることから、赤外線カメラを使ったソリューションもニーズが拡大してきそうである。

Hyundai:水素とソフトウェア主導がキーワード

前半は全て水素一色だったHyundaiのプレカン

Hyundaiは冒頭水素に関する取り組みの内容から始まった。やはり今年は水素に関する大手企業の発表が目立つ。来年2025年には、NEXOというこれまでの水素燃料自動車の次世代車両が登場する。

興味深かったのは下水汚泥汚泥などの有機性廃棄物を、クリーンな水素に変えることができる技術に触れたことである。”waste hydrogen”と呼ばれたその技術は現在、韓国で実証プロジェクトが稼働している。

この廃棄物や場合によってはCO2から有価物を生成する技術というのは、これからのカーボンニュートラル・サステナビリティを見据えて、多くの企業が興味を持っている分野でもある。

後半はソフトウェアについての話。「ソフトウェアのすべての部分が、すべての戦略を定義する=Software Defined Everything」と語っており、その並々ならぬソフトウェアへの注力ぶりが伺えた。

Ottonomo:自律配送ロボットはまだ時間かかりそうな雰囲気も

かなりニッチながら、先端技術としては気になる自律型配送ロボットのスタートアップであるOttonomoが講演するということで、参加してきた。

StarshipなどいくつかのL4配送ロボットが実証を拡大する中で、Ottonomoはよりプラットフォーム的な動きを見せている。そのプラットフォーム的に設計された車体とソフトウェアに対し、荷台の部分を置き換えることで、様々な用途に対応するという。

今回発表の目玉となったのが、「動くロッカー」である。ただし質疑応答で質問も出ていたが、実際にどこまでユーザーニーズがあるものなのかという点がやや気になった。あまり数字やビジネス面での具体的な話が無く、どういう状態になったら実証フェーズを抜け出せるのか、具体的な明言はされなかった。

SONY/Honda:熱狂的な雰囲気の中で昨年より一歩踏み込んだアフィーラに関するプレゼン

ソニーらしさを感じるプレゼンであった

昨年より一歩踏み込んだ形で、いくつかの取り組みや将来に向けての考え方を発表したソニー/ホンダ。マイクロソフトとの協業も発表され、ここでもGenerative AIについても触れられていた。

個人的には、プレゼンの中でそこまで強調はされていなかったが、「Emotional Experience」というキーワードがあった点に注目したい。昨年、BMWがivision deeで打ち出したのは将来、車と人の関係が変わり、車は人にとってのUltimate Companionになる、というものであった。

UX体験から考慮された非常にEmotionalなコンセプトカーであり、SDVによって機能的側面だけでなく、情緒的な側面でも車が価値を発揮する興味深いものだ。こうした領域はAIBOやエンターテインメントを手掛けてきたソニーこそ得意な領域なのではないか、と思っており、Emotional Experienceというキーワードが出てきたということで、勝手ながら期待している。

MIH(Foxconn):ブラックベリーとの協業が発表、ソフトウェア領域を強化

台湾の鴻海グループであるFoxconnが主導する電気自動車プラットフォームを開発するコンソーシアムMIHが、MIHのブースで発表を行っていた。

昨年のジャパンモビリティショーでも注目を浴びたMIHであるが、先般発表された3シーターのProject Xコンセプトカーが引き続き展示されるとともに、これまではハードウェアの取り組みを発表してきたが、今回ソフトウェア側も注力していくという旨が話された。

なお、今回提携するBlackBerryのIVYはEdge to Cloudのミドルウェアとなっており、両社のインテグレーションにより、車両のヘルスモニタリングや、電池のSOCモニタリング、サイバーセキュリティへの対応を図るとのことであった。

鴻海グループという影響力の大きい企業の参入ということで、今後の具体的な事業化のアクションについて注目される(今回は具体的な言及はなかった)。

明日は中盤戦

CESはまだあと3日間続く。

目玉のキーノートのIntelの講演や、Mobileyeのセッションなども残っており、各ブースを回りながら引き続き取材を進めていく予定である。

なお、後半2日間はデジタルヘルスやウェアラブル関連を中心に回りレポートする予定だ。時間があれば脱炭素関連の企業も回ってみたいと思う。