アーバンエアモビリティのeVTOLを開発しているWiskが、Blade Urban Air Mobilityと提携して、最大30台のeVTOLをWiskが保有した上でブレード社へ提供し、ブレード社が運用することを発表した。

ボーイングとKittyの合弁であるWisk

Wiskは航空機大手のボーイングとKitty Hawk(eVTOLベンチャー)が合弁で2019年に設立したベンチャー企業。Kitty Hawkが10年間開発してきたeVTOLの技術が元になっており、Kitty Hawk時代は個人購入用の機体を開発していたが、エアタクシー用途での機体開発にピボットした。

Wiskが開発する機体は、固定翼と複数のプロペラ、そして12個の独立したリフトファンを持つ。現在の実験機では最大時速160kmで、40kmの距離を飛行することができる。

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エアタクシーサービサーのBlade社

一方のブレード社であるが、すでに米国でエアタクシーサービスを開始している特徴的な企業だ。「アセットライトモデル」と表現される同社のビジネスモデルは、機体・パイロットを他社から提供を受け、自社のエアタクシーネットワークで運用する。ただし、現在ブレード社が提供しているエアタクシーはeVTOLではなく、ヘリコプターによって実施されているようで、eVTOLに置き換えることで、その利用シーンを増やしたいという意図がある。

ブレード社はこれまでに20万人のユーザーを輸送し、2019年の実績として1年間で約4万回の商業フライトを行い、売上は33m$(約35.8億円)、運行ルートは10ルートとなっている。ちなみにブレード社はこの売上を2024年までに10倍以上の402m$(約436億円)にする計画を持ち、特別目的買収会社であるExperience Investment Corp.(NASDAQ:EXPC)との合併による、SPACスキームを使ったIPOを行うことを昨年末に発表している。

次世代航空管理に向けたワーキンググループも形成

Wiskとブレード社は、今回の提携によって次世代航空管理に向けたワーキンググループを形成し、アーバンエアモビリティサービスに関するブレード社の6年間の経験を活用して、将来的なWiskが開発する機体の設計原則を定めるという。

Wiskは現在、実験型式証明に従って自律型eVTOL航空機を運用しており、可能な場合はブレード社の主要サービスエリアで初期テスト飛行を開始する予定だ。

ブレード社のCEOであるRob Wiesenthal氏は、次のように述べている。
「Wiskと協力して、従来の回転翼航空機から、安全で静かな、排出物のない電気垂直航空機へのブレードのサービス移行を加速することを楽しみにしています。」

ブレード社は様々な要件に基づいて、複数のEVA(eVTOLのこと)を利用する予定であり、最近、2024年後半に展開を開始する予定のサードパーティメーカーから、パイロットEVA機体を20機確保したと発表している。

 

今回参考のプレスリリースはこちら


アーバンエアモビリティの世界のベンチャー企業動向を整理したものはこちらも参考。

参考:(特集) 空飛ぶ車・アーバンエアモビリティの世界ベンチャー企業動向


ー 技術アナリストの目 -
ボーイング支援のWiskの動きも気になるところですが、更に興味深いのはブレード社です。eVTOLを使ったUAMのエアタクシーサービスは、商業サービスとして開始していないため、そのビジネスの実現性については不透明な部分もありますが、すでにヘリコプターでエアタクシーサービスを行っている稀有な企業であり、実際にある程度ユーザーがついているところを見ると、米国都市部の富裕層では、この市場初期段階でも一定数の空中輸送のニーズがあることを示唆しています。

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