LIB向け単結晶正極活物質を開発するカナダのベンチャー企業であるNano Oneが、グローバル自動車OEMと、LNMO正極の電池開発と評価のプロジェクトについて契約を締結したことを発表した。

初期のMoUでのプロジェクトは成功へ

Nano Oneはあるグローバル自動車OEMと2019年にMoUを締結し、単結晶クリスタルコーティングおよびそのワンポッド製造プロセスを使ったカソード材料の開発に取り組んでいた。

Nano Oneの技術についてはこちらで解説をしている。

参考:LIB向けの単結晶正極活物質の新しい製造方法を開発するNano One Materials

最近の発表で、この2019年から続いてきた開発プロジェクトは成功として完了したことが明らかにされた。この完了したプロジェクトでは実験的なニッケルリッチ正極に対して、Nano Oneのワンポッドプロセスを使うことで、耐久性とパフォーマンスを改善することが示されたという。

LNMOを使った電池セルの開発へ

そして次のプロジェクトとして、正極にLNMOを使い、Nano Oneの単結晶クリスタルコーティングと、ワンポッドプロセスを適用した電池の開発を行う新たなMoUを締結。これはマルチフェーズの開発と評価のプロセスとなっている。

また、Nano Oneの先進LNMOカソードを使った電池セルの共同開発に向けた将来の商業化に向けた協業も視野に入っている。

LNMOは、3次元スピネル型構造を持つ正極材料であり、コバルトフリーの正極材の1つとして期待されている。スピネル型構造では、その3次元格子内をリチウムイオンが動き回る。他のタイプの正極材よりもリチウムイオンが速く流れることができ、急速充電と放電が可能になり、また高電圧にすることができることから直列させる電池セルを少なくすることができる。コバルトフリーなため低コスト化も期待できる一方で、高電圧にすることで電解液の劣化を引き起こしてしまう点が課題となっている。(今回の発表ではこの課題をどのように解決するかまでは触れらていない)

Nano OneはこのLNMOを金属粉末と炭酸リチウムから単結晶で表面コーティングされた正極材を直接製造する技術であるM2CAMを使い、開発を行っていく。

 


ー 技術アナリストの目 -
先日記事で紹介しましたNano One Materialが自動車OEMと電池の共同開発を行っていることを明らかにしました。まずは初期の正極材としての性能は出たため、セルにして評価をするフェーズに入るようです。同社のM2CAM技術は非常に特徴的であるため、今後も技術開発の情報を追いかけていきたいと思います。

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