独自の4D LiDARチップを開発するSiLC Technologies社がFrost&Sullivan社から表彰
2020年7月23日、米国カリフォルニア州ベンチャーのSiLC Technologies社が、世界的な市場調査会社のFrost&Sullivan社の「2020年 北米3D / 4D LiDAR画像産業技術革新賞」を受賞したと発表した。
4D LiDARチップを開発するSiLC Technologiesとは?
SiLC Technologiesは、シリコンフォトニクスの専門家であるCEOのMehdi Asghari氏によって2018年に米国カリフォルニアで設立された。同氏はシリコンフォトニクス業界での20年以上の知見と、今回で3社目のスタートアップとなる。以前に立ち上げた2社はIPOに成功している実績を持つ。
2020年3月にはDell Technologies Capitalをリードインベスターとして12m$のシードステージの資金調達を完了したことを発表している。
同社は、長距離で高精度、かつ低コストでの生産を実現する独自の4D FMCW LiDARを開発しており、必要なコンポーネントを1つのチップに統合したことが特徴となる。現在、実用化に向けて開発を進めている。
同社の4D FMCW LiDARの特徴は?
4Dの意味 ~対象物の深さや速度も測定可能~
同社のシリコンフォトニック4D +ビジョンチッププラットフォームは、約200mの範囲で1.5インチ未満の物体を検出できるという。同社は必要なすべてのコンポーネントを1つのシリコンチップに統合。これにより、低コスト、コンパクト、低消費電力を実現し、大規模なスケーリングのある技術であるとしている。また、同社の技術は対象物の深さや速度も測定可能とされており、そのため「4D」と表現されている。
1550nmの波長を使ったFMCW(周波数変調連続波)
従来のLiDARではTOFアーキテクチャを利用し、905nmの波長帯の高出力レーザーが使われてきた。しかし、これらの波長帯ではコストのかかるアセンブリラインから低コスト量産が難しく、また目の安全性の懸念や、マルチユーザーによる干渉が広範囲で高精度なLiDARの使用を妨げる可能性がある。そこで、1550nmの波長での周波数変調連続波(FMCW)技術への移行が必要であると、同社は主張している。
一般に、FMCW LiDARは高感度、高分解能、速度検出などの特徴があるが、レーザ光源の非線形チャープによる精度劣化と、コヒーレンスによる距離制限が大きな課題とされている。同社はこの問題をどのように解決しているのか、詳細については明かしていない。
同社はCES2020で製品のデモを行っている。SiLCの4D+Visionチップで撮像された点群が高さ190mの屋上にあるカメラや250m先の道路の街灯支柱が検知できている様子が発表された。同社によると、300m程度の範囲までの物体を高精度で検知できる模様。
今回のFrost&Sullivan社による評価は、FMCW方式によるLiDARで業界の先駆けになるための体制ができているというものであった。同社のアプリケーション展開可能性が多岐に渡ることも評価されている。自動車、ゲーム・エンタメ、セキュリティ監視、産業用ロボットなど幅広い用途が期待されている。
FMCW LiDARで長距離への対応で先行するのは、Aeva社である。ZF社と生産にむけた提携を2020年9月に発表。300mまでの測定が可能という。Aevaを皮切りに、SILC Technologiesのような他のFMCW LiDARベンチャーも実用化に向けて開発を加速させている。
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