ニュース記事

宇宙からの送電スタートアップ・米AetherfluxがシリーズAで75億円を調達。Robinhood共同創業者が設立

INDEX目次

米国の宇宙関連スタートアップであるAetherfluxが2025年4月2日までに、シリーズA資金調達ラウンドで$50m(約75億円)を確保した。同日、自社ブログで発表した。

Aetherfluxは人工衛星で太陽光発電を行い、それを地上に送電、供給することを目指す。創業者兼CEOのBaiju Bhatt氏のLinkedInによると、2024年3月に創業したようだ。カリフォルニア州に拠点を設ける。

宇宙で発電・地球へ送電というIsaac Asimovのアイデア

先程、名前の出たBhatt氏は、フィンテックスタートアップであるRobinhoodの共同創業者。Robinhoodは2021年、Nasdaqに上場し、その際や上場後の売却益からBhatt氏はビリオネアとしても知られる。なお現在のBhatt氏は、Robinhoodでボードメンバー以外の役職から退いており、ほぼAetherflux に専念している形だ。

Aetherfluxが進める宇宙での発電、地球への送電というコンセプトは、SF作家のIsaac Asimovが1941年に構想したもので、彼の『Reason』という短編小説でも取り上げられる。そして、Aetherfluxに限らず、このアイデアをさまざまな組織が実現しようと取り組んできた。

では、Aetherfluxはいかにして、宇宙から地球への送電を行おうとするのか。

2025年初頭、Bhatt氏はポッドキャスト番組に出演。そこで、「私たちのチームは現在、主にバスの上に設置するペイロードの構築に注力している。これは衛星バスが生成するすべての電力を取り込み、それをレーザー電力に変換する」と発言した。

宇宙から地球への送電方法として当初、検討されていたのはマイクロ波の利用だ。人工衛星の太陽光パネルで発電し、それをマイクロ波に変換し、地球の受電システムで受け取る流れである。

これに対し近年、検討されるようになったのが、Bhatt氏が語るレーザーによる送電だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、マイクロ波と比べて長距離の伝送がしやすい、システムを小型化しやすいメリットがあると説明する。

また、Aetherfluxのオフィシャルサイトによれば、受電側だけでなく発電側も小型の人工衛星であり、それを多数、配置するという。この説明からは、Starlinkのエネルギー版のようにも、イメージできる。

シリーズAとは別に国防総省からも資金を受給

シリーズAは、2社のベンチャーキャピタル(VC)が主導。また、RobinhoodのVlad Tenev共同創業者兼CEO、アーティストのJared Leto氏ら個人投資家も応じている。

Bhatt氏とともにRobinhoodを創業し、今回のシリーズAに応じたVlad Tenev氏(Robinhoodメディアアセットより)

さらにAetherfluxは、シリーズAとは別に米国防総省からの資金投入があったことも、発表した。これは、Operational Energy Capability Improvement Fundという名称の基金によるものであり、低軌道(LEO)からの電力伝送の概念実証プログラムとして、支給された。

以上の資金を、「ミッション1」と位置付けた2026年に予定するLEOからの送電実験に用いる。

なお、Aetherfluxは発表したブログの中で、中国、欧州も同様の技術開発を進めていることに触れつつ、「アメリカの勝利に貢献したいなら、ぜひ参加してください」と採用ページへのリンクを設置する形で、文章を締めくくっている。




【世界の宇宙開発の技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界の宇宙開発の技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら