「5分で充電可能」がコンセプトの急速充電LIBを開発するイスラエルベンチャーのStoreDotが、量産化に向けて中国メーカーEVE Energy Co., Ltd (EVE)と提携したことを発表した。

EVE Energyとの提携関係を強化

EVE Energyは以前よりStoreDotと提携関係があり、サンプルセルを製造していたが、今回改めて新しい枠組みでの契約合意があったことが明らかにされた。

この新しい契約の枠組みとは、StoreDotのXFC技術のスケールアップに向けた開発活動や、EVクライアント企業への技術紹介を目的としたエンジニアリングサンプルの製造、また大量生産のための合弁会社設立も含まれる。

なお、EVE Energyは深セン証券取引所に上場している中国のバッテリーメーカーで、民生用電池(リチウム一次電池、小型リチウムイオン電池、三元円筒形電池を含む)や動力電池(新エネルギー車用電池とその電池システム、エネルギー貯蔵を含む)の研究開発や製造・販売を行っている。売上規模は2020年で約81億元(約1,374億円)の企業だ。

メタロイドナノ粒子による第二世代セルは2024年に大量生産を計画

StoreDotは負極をグラファイトからシリコンなどのメタロイドナノ粒子に置き換えて、充電プロセス中の安全性、サイクル寿命、およびセルの膨張における主要な問題を克服し、急速充電が可能な電池の実用化を狙っている。なお、同社は「シリコンなどのメタロイドナノ粒子」と表現しているが、スズ(Sn)の業界団体であるInternational Tin Associationの記事によると1)「私たちの努力のほとんどは現在、ケイ素およびスズへの移行に焦点を当てている」と、StoreDot CEOが語っていることが紹介されている。そのため、シリコン(Si)・スズ(Sn)の複合材、またはスズを使った負極も並行して開発が進んでいる可能性もある(注1)。

第一世代のセルはゲルマニウムを使っていたが、現在は第二世代のセルの開発が進み、ゲルマニウムではなくより安価なシリコンやスズをベースにした負極を使ったセルの開発が進められている。

同社のロードマップによると、2021年内にこの第二世代のセルのサンプル提供が開始する予定であり、超高速充電性能を有しつつ240Wh/kgを達成しているという。この第二世代は2024年の大量生産が計画されており、2028年には固体電解質ベースの第三世代を実用化するという。

 

今回参考のニュースリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
StoreDotも年内に予定されている正式な第二世代サンプル提供に向けて、動きが活発化してきました。ただし、顧客による第二世代セルの本格的な評価はまだこれからだと思いますので、同社が狙うEV向けで量産が本当に2024年に開始するかどうかは実際にはわからないところです(短期用途として電動二輪やドローン等は、よりあり得るところ)。年内にまた新しい発表を出してくると思いますので、引き続き注目していきたいと思います。

参考文献:

1) StoreDot accelerate to fast-charging eVs with silicon and tin, International Tin Association