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脳波ヘルメットを開発するKernelが最初の50台のデバイスを出荷を始める

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脳波ヘルメットを開発しているベンチャー企業のKernelが、同社の最初の50台のデバイス出荷を開始すると、同社HP内で明らかにした。

ヘルメット型の脳波デバイス

Kernelは、脳波を解析することができるヘルメットデバイスを開発している。

この企業は創業者のBryan Johnson氏が54m$(約60億円)もの資金を投じて、世界クラスの物理学者、エンジニア、神経科学者を集めて2016年に米国カリフォルニアで設立された。新しいブレインマシンインターフェース(Brain Machine Interface)を開発している。

同社CEOのBryan氏はこう語る。「メインフレームはPCになり、次にスマートフォンになりました。10億ドルかかっていたゲノム解析は1,000ドルのゲノム解析になりました。次は頭脳と精神です。」

脳波を高精度でセンシングし、解析するにはこれまで病院で巨大な装置を使う必要があった。同社が目指すのは、ヘルメット型の簡単に装着できるデバイスで脳波を読み取ることができる、一般消費者が購入可能なデバイスの実現だ。

同社は2つの製品を発表している。1つは、Flowという近赤外分光法(TD-fNIRS)を使ったウェアラブルデバイスで、注意・焦点や認知的負荷の評価、メンタルヘルス、痛みの定量化などの目的で使うことができる。

商業化されているCMOSプロセスで設計された検出モジュールは、690nmと850nmのパルスレーザーが含まれる。デバイスにはこの検出モジュールが多数敷き詰められている。

https://www.youtube.com/watch?v=472zXMfi2k0
同社公開の動画への直リンク
(Photonics West 2021での講演内容)

2つ目は、Fluxというデバイスで、光ポンピング磁力計(OPM)に基づくターンキー脳磁図(MEG)プラットフォームとなっている。覚醒、感情、注意、記憶、学習などの機能の基礎となる複雑な脳活動へのリアルタイムアクセスを実現する。

リアルタイムニューロン活動フィードバックや、神経変性疾患やてんかんの評価、高解像度の脳マッピングなどのために利用される。

Flowデバイスが2021年第三四半期にプリセールス予定

1つ目のFlowデバイスは2021年第三四半期にプリセールスを開始することが発表されており、今回の50台デバイス出荷はプリセールスの前段階としての試験提供となる。ハーバード大学医学部、テキサス大学、メンタル開発の新興企業であるCybinIncなどの研究機関に送られるという

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
脳波センシングデバイスは様々な企業や大学が研究開発を行っていますが、当然ながら技術的な難易度が非常に高いことから、その開発には時間軸が長くかかり、開発に失敗するケースも多いです。このKernel社は脳波ベンチャーの中でも比較的多く資金を集めている企業の1社で、プリセールス以降、どのようにアプリケーションが開拓されていくのか注目したいところです。

  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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