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米Science Corporationが転換社債で149億円を調達?複数メディアが「Neuralinkのライバル」と報道する神経科学スタートアップ

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米国の神経科学スタートアップであるScience Corporationが、転換社債により$104m(約149億円)を調達した模様だ。2025年4月中旬、BloombergCrunchbaseのオウンドメディアが報じている。一方、Scienceからの公式発表は行われていない。

報道したメディアはScienceを、「Neuralinkのライバル」といった文脈で説明する。Neuralinkとブレインマシンインターフェース(BMI)については、以下の記事も参考にしていただきたい。

参考記事:NeuralinkとBMI。どのような技術か?競合の動向は?

Scienceの特徴は「身体機能回復」と「ニューロンとの接続」

Science は2022年、カリフォルニア州で設立。自らの技術を、BMIではなくブレインコンピューターインターフェース(BCI)という言葉で説明する。

Neuralinkの場合、インプラントを脳に縫い付けることによって正確な脳波の計測やデバイスの操作につなげる。前出の記事で取り上げたように、2024年から2025年にかけ人への施術を行ったことを、Neuralinkに投資するElon Musk氏が明らかにした。

一方、Scienceは、BCIによって得られるより具体的な利益を挙げる。それは、視力の回復だ。

黄斑変性症、網膜色素変性症、シュタルガルト病といった視力の回復が難しい病を患う人に対し、BCIで神経を補助し機能を取り戻すことを目指す。また、オフィシャルサイトを読む限り、視力だけでなく認知機能やその他の運動機能を回復させることも目指しているようだ。

抵抗感を覚える読者もいるかもしれないが、ScienceのBCIもやはり脳にインプラントを埋め込む。インプラントを脳に縫い付けるNeuralinkとは異なり、Scienceは脳の中でもニューロンとインプラントをつなげることで、信号のやり取りを行う。よって、インプラントのサイズも相当小さくなると考えられる。これらは今のところ、研究開発段階だ。前述の視力回復向けのインプラントは、「PRIMA」と名付けられている。

他、ScienceはSciFiというモバイルWi-Fi端末のようなデバイスをすでに製品化。$1024(約15万円)で販売する。SciFi は、神経に関する実験でデータ収集ができるデバイスである。

Scienceの最近の動きとして挙げられるのが、PRIMAの予備臨床試験の結果発表だ。2024年10月のことである。38人の被験者を対象に行い、文字の読み取りが可能になったため、「良好」な結果であるとしている。

リードインベスターはVC1社

2025年4月の転換社債による資金調達で明らかになっているのは、1社のベンチャーキャピタル(VC)がリードインベスターを務めたことのみ。公式発表がないため、資金の使途や経営陣の意向などは不明だ。

もっとも、研究開発中の技術であるため、テクノロジー面でのさらなる進化に使われると考えられる。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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