自律航空配送サービスを手掛けている米国ベンチャー企業のZiplineが、シリーズEで250m$(約280億円)を調達したことを発表した。

今回の調達ラウンドでは、既存投資家のBaillie Gifford、Temasek、Katalyst Venturesに加えて、新規投資家としてFidelity、Intercorp、Emerging Capital Partners and Reinvent CapitalらのファンドやVCが参画した。

自律航空配送サービス

Ziplineは2014年創業のベンチャー企業で、2016年10月にアフリカのルワンダでサービスインされたことで過去に話題となった。その後、同社の自律飛行ドローンを使った配送サービスは、米国全土にネットワークを拡げている。

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同社の機体は時速100kmで飛行する固定翼タイプのドローンだ。同社の主張によると、よくあるクアッドコプターのドローン(小さいプロペラが4つついているタイプ)はエネルギーの効率が悪いため、この飛行機に近い形態を採用したという。

同社はこの機体を使って、物の配送のためのインフラが弱いエリアで、医薬品や血液などのクリティカルな物の配送、健康に関する商品の配送を行う。医療・ヘルスケアの領域に特化した製品を配送することに特化していることも特徴だ。

創業以来、同社の自律飛行機体がフライトした距離は1,000万マイルを超えており、商業配送は15万回を超え、サービス提供した顧客は2,500万人にも及ぶ。すでにサービスが商業化されているレイターステージのベンチャー企業となる。

アフリカでの事業拡大の動き

同社は今回の資金調達の発表において、直近1年間にあった動きについて触れている。

特に配送インフラの脆弱なアフリカの国でサービス拡大が見られる。

例えばルワンダでは現在稼働中のサービス時間が拡大され、世界初となる24時間年中無休のオンデマンド自律配送サービスを提供している。また、ガーナの保健省とはパートナーシップを締結。国の人口の90%にあたる2,400万人の居住エリアをカバーする4つの配送センターを追加・拡大している。ナイジェリアのいくつかの州では、ワクチン、血液、医薬品などの医薬品を提供するための新しいパートナーシップを締結している。

さらに、COVID-19ワクチンを配送することも始めている。米国のノースカロライナ州ではNovant Healthとのパートナーシップにより配送を開始し、アフリカのガーナでも配送を開始しているようだ。

豊田通商との戦略的事業提携

Ziplineは豊田通商との戦略的事業提携も2021年3月に行っている。

豊田通商のネットワークを通して、日本のヘルスケア物流における参入を行う。豊田通商は、Ziplineの航空機とロジスティクス技術を活用した独自の配送センターを管理し、ヘルスケアプロバイダーの顧客にオンデマンドで物資を配送していく。

なお、両社はガーナでも共同で活動しており、ZiplineはGokals-Laborex Limited(豊田通商グループの医薬品販売代理店)からガーナの病院に医療製品を提供している。今年改めて発表された戦略的事業提携の発表は、両社の提携関係をより広げた形となる。

 

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ー 技術アナリストの目 -
日本にいると気づきにくいのですが、すでに米国とアフリカを中心として、こうした自律ドローンによる配送は商業サービスとして稼働しており、配送回数が同社だけで15万回を超えることになっています。日本ではANAもドイツのスタートアップであるWingcopter GmbHと提携し、来年のサービスインを狙っていますが、まずは離島への配送などや災害時の配送などのニッチに限られます。Ziplineや他の海外のドローン自律配送ベンチャーの動向をベンチマークすることで、事業開発の参考になりそうです。