eVTOLを開発しているドイツのベンチャー企業のLiliumは、8月2日、ブラジルの大手航空会社であるAzulと、戦略的提携を行い、220機のeVTOL販売契約(10億ドル)を行うことを発表した。

ブラジル国内線に強いAzulがeVTOLを導入へ

Azulは2008年に設立されたブラジルの急成長航空会社で、ブラジル国内の航空市場で32%のシェアを持ち、ブラジルの航空会社で3番目に大きい企業だ。ブラジル国内110か所以上の都市を繋ぐ強固な国内ネットワークを持ち、1日に700便を運航している。

AzulのCEOであるJohn Rodgerson氏は、次のように述べている。

「当社のブランドプレゼンス、独自のルートネットワーク、および強力なロイヤルティプログラムにより、ブラジルでLilium Jetネットワークの市場と需要を創出するツールが提供されます。過去13年間にブラジルの国内市場で行ったように、Lilium Jetを使用して、今後数年間でまったく新しい市場を創出します。」

今回の提携における両社の役割分担はこうだ。

Liliumは同社が開発するeVTOLをAzulへ提供する。またLilium Jetの状態モニタリングプラットフォーム、交換用バッテリー、その他カスタムスペアパーツを提供していく。そしてAzulは、Lilium Jetの運用と保守を行うことが期待され、また、Lilium Jetの認証およびその他の必要な規制当局の承認のために、ブラジルで必要な規制当局の承認プロセスでLiliumをサポートすることが期待されている。

Liliumは機体開発と事業開発を加速

Liliumは2025年に世界の複数地域で同社が開発するLilium Jetの運用を開始する予定であり、開発と事業開発を並行して進めている。

つい先日、同社がこれまで30社以上評価を行い探索していたシリコンアノードのリチウムイオン電池のサプライヤを決めたことを発表した。

参考:空飛ぶ車のLiliumがシリコン負極電池セルのCUSTOMCELLSをパートナーに選定

そして事業開発面では、同社は拠点のドイツを中心として、ミュンヘン、ニュルンベルク、デュッセルドルフ、ケルン/ボン空港とのパートナーシップを通じてドイツ国内のサービス網整備、また米国のフロリダでのエアタクシーの整備を進めている。

参考:ドイツのLiliumがFerrovialとeVTOL用のポートをフロリダに10か所以上整備すると発表

今回のブラジル国内線に強い航空会社との提携は、これまで発表していた欧州・米国に追加して更なる事業開発の機会となることが期待される。

 

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ー 技術アナリストの目 -
Azulは導入している航空機は全てブラジルのエンブラエルが製造したものであり、同社と繋がりが強いことから、エンブラエル傘下のEVEのeVTOLを導入しそうなものですが、Liliumの機体を導入する方向のようです。これまで欧州・米国・中国という主に3極で事業開発が進むこのアーバンエアモビリティ市場ですが、ブラジルでも導入の動きとなりました。ただしバーティ―ポートも含めたインフラ面の整備や、そもそもビジネスとして成立するかのフィージビリティスタディ―など、まだ不透明な部分も多いです。

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