量子コンピューター開発のQuantum Machines がシリーズCで254億円を調達。超伝導、半導体スピンなどさまざまな方式を採用

イスラエルの量子コンピューター開発スタートアップであるQuantum Machines(以下、QM)は2025年2月25日、シリーズC資金調達ラウンドで$170m(約254億円)の確保を発表した。
QMは単に量子技術を探求するだけでなく、プログラミングやチップなどさまざまなアプローチから実用化を目指す。また、量子コンピューターのスタートアップは単一種類の量子ビットを採用するケースが見られるが、QMの場合は超伝導、半導体スピン、光、中性原子と4つの方式で開発する。
ワイツマン科学研究所出身者により設立
CEOのItamar Sivan氏、CTOのYonatan Cohen氏、チーフエンジニアのNissim Ofek氏という博士号を持つ3人によって、QMは2018年に設立。このうちSivan氏とOfek氏はイスラエルのワイツマン科学研究所で量子エレクトロニクスの研究者であった。また、Cohen氏もワイツマン科学研究所出身で半導体や微細加工の研究者であるが、同研究所の起業家プログラムを創設した経歴も持つ。
量子コンピューターは、ビットの中に0と1が両方存在する「量子重ね合わせ」によって複雑な計算処理が可能となり、この状態(コヒーレンス時間)をどれだけ維持できるかを各開発者が競い合っている状況だ。
QMは2023年5月、同社の技術を活用したチューリッヒ工科大学の研究チームが「世界で最も重い量子重ね合わせ」を実現したと発表。この件を発表したブログやQMのウェブサイトを閲覧すると、特に量子の「制御」という言葉を多く目にする。
制御に関しては量子ビットの方式と同様、さまざまなアプローチがあるが、例えばマイクロ波信号をダイレクトデジタル合成することでコヒーレンス時間を延ばす、といった取り組みが行われる。
ダイレクトデジタル合成を行うマイクロ波フロンエンドモジュール(QMプレスリリースより)
QMの最近の動きとしては2024年5月、冷却原子などの観測のため浜松ホトニクスのORCA-Questカメラと同社のプロダクトの統合を発表した。
IntelのCVCが参加
シリーズCはベンチャーキャピタル(VC)が主導し、新規投資家としてはIntelのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるIntel Capitalなどが応じた。また、QMの累計資金調達額は$280m(約419億円)に到達している。
QMのNir Ackerman CFOは、「この資金調達により、当社は拡大を加速し、イノベーションを推進し、ステークホルダーに長期的な価値を生み出すための好位置についたと考える」と資金の使途を示唆的に述べた。
また、Sivan CEOは「量子コンピューターの本格的な導入はもうすぐそこ。これは負けのないゲームであり、私たちはこの分野のリーダーたちと協力してコアインフラストラクチャを提供することを大変光栄に思う」と、Cohen CTOは「量子プロセッサを機能的な量子コンピュータに変えるというのは、非常に大きな技術的課題だ。量子システム、膨大な量のデータ、量子プロセッサと従来のプロセッサなどを当社のプラットフォームは統合できており、研究室でのイノベーションからデータセンターへの展開まで迅速に進めることができる」とそれぞれ述べている。
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