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警察・消防向けドローン開発のBRINC Dronesが110億円を資金調達。ガラス破壊で建物への進入も可能なハードウエア

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警察・消防向けドローンを開発する米BRINC Dronesは2025年4月8日、$75m(約110億円)の資金調達実施を発表した。

米国では、警察、消防、救急への緊急電話番号が「911」となっている。そのため、BRINCは自社のプロダクトを「911対応ドローン」としてアピールする。

創業のきっかけは2017年のラスベガス銃乱射事件

BRINCは2017年、Blake Resnick氏によってワシントン州シアトルで設立。Resnick氏は、14歳でネバダラスベガス大学に入学したものの約2年でノースウエスタン大学に転籍し、そこも約1年で中退してBRINC を起業したという人物である。

Blake Resnick氏(BRINCプレスリリースより)

起業したきっかけは、2017年に発生したラスベガスでの銃乱射事件。加害者を含む数十人の死者を出し、またイスラム国が犯行声明を出した(実際に因果関係があるかは疑問視されている)ことで、ご記憶の読者もいるだろう。

Resnick氏は、同様の事件の予防や対策にドローン活用が浮かび、BRINCの起業と並行してDJIでのエンジニアリングにおけるインターンも経験した。

BRINCはすでに商業展開しており、ハードウエアとしてのドローン、ドローンの映像や音声を中継・記録するソフトウエア、これらの保守プログラムでマネタイズを図る。

例えば警察向けのドローンでは、パトロールカーと同様に赤青のライトの点滅、サイレンを鳴らすことができ、事件現場の加害者や被害者と通話が可能。そればかりでなく、ガラスを破壊して建物に進入する機能も備える。

BRINCが米国の行政機関や経済界から注目を集めるのは、機能だけが要因ではない。厳しい対中姿勢を示す米政府は、中国製品の利用に制限を加えている。Biden政権時よりTikTokの排除を進めていたことが、その象徴的事例といえるだろう。

こうした規制は、Resnick氏が過去、インターンとして在籍したDJIを含むドローン製品も例外ではない。とりわけ中国のドローンメーカーについては、ウイグル民族への弾圧に関与したと米政府が指摘しており、すでに利用が難しい状況だ。

こうした事情から、米国の行政機関は国内でつくられたドローンを求める。一方、今回の資金調達を報じるTechCrunchは、911対応のドローンはBRINCだけでなくFlock Safety、Skydioも存在し、競争が激しい分野であると指摘している。

Motorolaと業務提携を実現

2025年4月の資金調達は、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。他、Motorola Solutionsや、Figmaの共同創業者兼CEOであるDylan Field氏などが応じた。

Motorolaとは、資金だけでなく業務面でのパートナーシップも結ばれた。前出のTechCrunchによると、米国内の911コールセンターの多くがMotorolaのソフトウエアを導入している。パートナーシップにより、911コールセンターにおけるMotorolaのシステムとBRINCのハードウエア・ソフトウエアとが、統合されるようだ。

資金は、生産、研究開発、人事面での拡大に利用するという。

Resnick氏は「私たちの未来に対して、極めて興奮している」と思いを述べた。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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