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DARPAの最新ロボットプログラム SUBTERRANEAN CHALLENGE

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 DARPA(米国国防高等研究計画局)は米国の軍事使用のための新しい技術開発・研究を行う国防総省傘下の機関である。毎年、多額の研究予算が投じられ、民間企業や大学研究機関を巻き込み、イノベーションを生み出してきた。ロボティクスやAI、バイオテクノロジーなど、軍事に関わる周辺領域の技術を幅広く研究している。

イノベーションを生むDAPRAのプログラム

 特に日本でDAPRAを有名にしたのは、ロボットプログラムや自動運転のプログラムではないだろうか。古くは、2004年・2005年に「DARPA Grand Challenge」という砂漠を自律走行する車のコンペティションが開かれた。2004年の段階では、ゴールできた車はない状態だったが、これが2005年に再度開催されたコンペティションでは5台もの車がゴールできたという。そして今では有名な自動運転に欠かせないセンサーであるLiDARのトップを走る企業であるVelodyne社の創業者がこのプログラムに参加していた。その後、2007年にはDAPRA Urban Challengeが開催され、この時には5台もの車に同社のLiDARが搭載されていたという。

 また、2013年にフロリダ州で開催された「DARPA Robotics Challenge」の予算を最高得点で通過した日本の東大発ベンチャーSCHAFTは、同プログラムの開催前にGoogleによって買収されている。

 このように、ロボティクスや自動運転技術の発展にはDARPAのプログラムが関わっているのである。

SUBTERRANEAN CHALLENGEとは

地下×ロボットが今回の舞台

 そんなDARPAであるが、今回は地下を舞台にしたロボット技術のコンペティションを実施している。SUBTERRANEAN CHALLENGE、通称「SubTチャレンジ」である。今回はこのSubTについて紹介する。

 このプログラムは2018年から参加者の募集を受け付けており、2019年から3つのテーマでの予選が順次実施されている。最終選考は2021年8月となっている。

 地下環境下は複雑で、戦闘作戦行動や、災害対応において適切に対応する必要がある。同プログラムは、地下環境下において迅速にマップ、ナビゲート、検索をするための斬新なアプローチを実用化することを支援するもの。地下環境下においては、強靭でロバストなロボットの動き・制御、そして周囲の地形を把握するための高精度かつ複雑なセンシング技術が求められる。過去に砂漠地帯で自動運転の実用化に筋道をつけたDARPAが、次に狙う地下環境という設定は大変興味深い。

 競技は3つの予備戦があり、トンネル内、都市地下環境、洞窟という3つのシチュエーションでのサーキットでロボットの競争が行われる。競争は「システム」という物理環境下での実際の走行と、「仮想トラック」というシミュレーション上での走行の2つで行われる。なお、洞窟サーキットにおいてはCOVID-19の影響で、仮想トラックのみでの実施となる。

 それぞれのコースの上位ランキング者は$250,000、$150,000、$100,000の賞金を得ることができる。ファイナルイベントの勝者はシステムイベントで最大200万ドル、仮想トラックで最大150万ドルを賞金として得ることができる。

参加者の顔ぶれを紹介

 今回の参加者は19チームである。参加は多国籍であり、企業から大学まで非常に幅広いエントリーとなっている。

出所)当社調べで作成

この中から出るか、将来の有望ロボットベンチャー

 各チームを見ると、単にロボット系の企業・研究室だけでなく、航空宇宙・防衛産業といった分野のロボット・ドローン・AI企業も含まれる。以下では2チーム、興味深いチームを紹介する。

1.CoSTAR

 NASAのJet Propulsion Laboratoryとカリフォルニア工科大学、および米国MITや韓国の研究機関のKAISTなどの研究者が一体となった、総勢60人以上のチームである。「次世代自律型地下探査機」を標ぼうしている。

 極限環境下における自律的探索を実現するために、NeBulaという統合モジュラーソフトウェアシステムを開発している。ビジョン・IMU・ライダー・レーダー・接触センサ・測距システム(磁性信号やUWB)などの複数のセンサーを搭載し、ロバスト性を高めている。また、大規模SLAMと3Dマッピングにより、洞窟内の地形マップを形成する。強化学習と一般的な機械学習手法を適用し、自律的なスキル学習も可能であるとのこと。

画像クレジット:CoSTAR

 なお、スポンサー・パートナーシップには、インテル社やボストンダイナミクス社、Velodyne社も含まれている。

2. CERBERUS

 ネバダ大学、ETHチューリッヒ、シエラネバダコーポレーション、カリフォルニア大学バークレー校、EPFLスピンオフベンチャーのFlyabilityの混成チーム。洞窟内を歩く協調ロボットと、洞窟内の空中を飛ぶフライングロボットによる協調的自律探査を開発している。鉱山、トンネル、下水道などのテストサイトでも実験を行っており、民間および軍事分野でのゲームチェンジャーを目指す。

https://www.youtube.com/watch?v=1aWQPTfseIE&feature=emb_title
同社公開のYoutube動画への直接リンク

3. CSIRO Data61

 オーストラリアのブリスベンを拠点とする、世界有数のロボット工学および自律システム研究グループの1つであるCSIROの研究ユニットと、Emesentというオーストラリアの産業用ドローンの企業、そしてジョージア工科大学のチームである。

 脚式ロボットに搭載されたLiDAR・カメラ・IMUといった複数のセンサがあり、複数のロボット間で、マップのフレームを共有する。各ロボットは他のロボットから入手可能なすべての情報を活用し、ライブグローバルマップを作成する。こうした自律分散的なシステムを作り上げている。

https://www.youtube.com/watch?v=yFeRx_M8uhU&feature=emb_title
同社公開のYoutube動画への直接リンク
ー 技術アナリストの視点 ー  今回のようなDARPAのコンペティションは、日本ではあまり話題になっていない。一方で、CoSTARにはインテルなどの企業もスポンサード・パートナーシップで接点を持っている。こうしたDARPAのプログラムから未来の有望ロボットベンチャー企業が生まれる可能性もあり、要注目である。
  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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