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AIマッサージ開発の米Aescapeが125億円を調達。投資家にはNBA選手も

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AIマッサージデバイスを開発する米スタートアップのAescapeは2025年3月4日、$83m(約125億円)の資金調達完了を発表した。

Aescapeは2017年に設立し、米ニューヨークに本社、西海岸サンフランシスコに拠点を置く。

セラピストの手の動きだけでなく「人肌感」まで再現

日本国内で一般的に流通するマッサージチェアは、背もたれと座面の角度が広めの椅子に座り、ソファの下に隠れたタイヤのような「もみ玉」や板状の構造物、エアバッグなどによって人間の肉体をほぐす。

それとAescapeのマッサージデバイスとを比較すると、まず大きく異なるのがサービスを受ける側の姿勢だ。Aescapeの場合、人間対人間のマッサージと同様、サービスを受ける人がうつぶせに寝そべる。

そしてセンサーで個々人の体型の輪郭、肉体の緊張状態をマッピング。「Aerscan」と呼ばれるAIシステムが、120万カ所のデータポイントを読み取り、デジタルツインのように人体とそこでどのようにマッサージを行うかの設計図を作成する。

その上で、いわゆる「手技」を行うのが、「Aerpoints」と呼ばれるアームと人間の手を再現した部分が組み合わさる構造物だ。Aerpointsは、セラピストの指の関節、親指、もみ、手の甲、手のひら、前腕、肘といった7の手技を再現。さらに、人体と触れる部分を華氏95度(摂氏約35度)まで加熱し、人の手でマッサージをされているような感覚を利用者に与えるものとなっている。

Aescapeのプロモーション動画

今回の発表によると、AescapeのメンバーはAmazon、Apple、Tonal、Uber、MakerBotなどの出身者で構成されるという。前述のデバイスは2024年よりさまざまな施設で導入が始まり、現時点で全米60カ所に展開。Grand Hyatt、Four Seasonsなどといった高級ホテルブランドの一部店舗が採用する事例も見られる。

Aescapeはマッサージを受けられる場所や料金をウェブで公開。料金は最も安い30分のプランで$60(約9000円)、高額な60分のプランでは$120(約1万8000円)となっており、複数回、受けられるプランも用意する。ミネソタ大学の調査では、米国でのマッサージ料金の相場は60分で約$60としており、若干、高めの価格設定だ。

なお、Aescapeのリクルートページを見ると、「認定マッサージセラピスト、コンサルタント」の人材を募集している。ここから、人間のセラピストの動きをデータ化などし、デバイスへ反映していることがうかがえる。製造業で、AIやロボティクスにより熟練工の動きを再現するのと、同様の方法といえるだろう。

米国外への進出をもくろむ

今回の資金調達は、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。その他、NBA選手のKevin Love氏など既存投資家も対応した。

資金は、事業の拡大、新市場への進出、グローバルなブランドとのパートナーシップ拡大に使われるとしており、今後、米国以外にも展開していくと見られる。

資金調達とともに、Apple、Adobe出身のEswar Priyadarshan氏がエンジニアリング担当副社長に就任するなど、役員人事も発表した。

創業者兼CEOのEric Litman氏は、「新たな資金を得て、高い利用率やリピート率といったこれまでの目標にもさらに力を入れ、ホスピタリティ、プロスポーツ、フィットネス、主流の市場に進出しながら、当社とパートナー、両方の成長を加速させていく」と抱負を語った。

 



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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