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米Ataraxis AIがシリーズAで30億円を確保。がんの「予後」までをケアするAIモデル開発

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がん診断・治療に関するAIモデル開発の米スタートアップ、Ataraxis AIは2025年3月5日、シリーズA資金調達ラウンドで$20.4m(約30億円)の確保を発表した。

Ataraxisは2023年、ニューヨーク大学からスピンアウトする形で設立。同大学で画像診断を行いAIの研究も行っていたJan Witowski氏(CEO)とKrzysztof Geras氏(チーフサイエンティスト)が共同創業者である。また、MetaのチーフAIサイエンティストのYann LeCun氏も特別顧問として参画する。

乳がん予後予測プラットフォームが年内発売へ

これまでも、画像からがんを発見する、医師の診断を支援するCADe、CADxと呼ばれるソフトウエアが存在していた。

Ataraxisがそれらと異なるのは、AIを活用している点がまず挙げられるだろう。さらに、診断だけでなく「予後」にも注力。患者に対し画一的なケアを行うのではなく、個別の疾患の状況をさまざまな情報源から収集し、AIが分析する。人間の視点では感知できない疾患のパターンを検知する点が、特徴だ。

AIの基盤モデルは「Kestrel」という名称で、Ataraxisが開発した。Kestrelは億単位の数の病理画像で事前トレーニング。そして、マルチモーダル学習や自己教師あり学習で、予後の疾患の状況を高精度、高効率で判断できるよう機能拡張が行われた。

Kestrelを土台として、Ataraxis Breastというプラットフォームもすでに開発している。乳がん患者の予後を予測するものだ。分析には、がん細胞の標本である組織ブロックは不要で、H&E染色スライドを利用。高リスク患者と低リスク患者を識別する。Ataraxisはスライドを受け取ってから、結果を1日で納品する。

Ataraxis Breastは標準的な治療より精度の30パーセント向上を同社はアピール。2025年後半にも発売する予定だ。

Peter Thiel氏のファンドも参加

シリーズAはベンチャーキャピタル(VC)が主導。また、Peter Thiel氏のファンドと見られるThiel Bio、保険会社・Oscar Health創業者のMario Schlosser氏、Tempus(Ataraxisと同じくAI医療技術を開発)のRyan Fukushima COOが応じた。他にも、実名は出されていないものの、複数のエンジェル投資家などが参加した模様だ。

資金の使途は、「乳がん内外の治療選択機能の拡大と、次世代AI基盤モデルの開発による製品の継続的な開発」と説明。前者は、Ataraxis Breastのマーケティングなどと見られる。

CEOのWitowski氏は、次のようにコメントした。

「この調達は、われわれが成し遂げている仕事と、精密医療におけるAIの計り知れない可能性を示している。また、(Ataraxis Breastの)臨床検証を受けてからわずか数カ月で新たな資金を確保したことは、われわれの進歩を反映している。

この資金により、がんの治療法を変え、最終的には2030年までに新規がん症例の少なくとも50%に影響を与えるというわれわれの使命を果たしていく」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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