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磁場閉じ込め方式核融合開発のRenaissance Fusionが51億円を調達。シリーズA最初のクローズ、メガバンク系ファンドが主導

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核融合炉を開発するフランスのスタートアップ、Renaissance Fusionは2025年3月6日、シリーズA資金調達ラウンドにおける最初のクロージングで、€32m(約51億円、約$34m)の確保を発表した。

Renaissance Fusionは2020年、設立。研究所やスタートアップが集積するフランス南部のグルノーブルに本拠を置く。

「シンプル」なステラレーターを実現

核融合発電は、プラズマを用いて核融合を起こす「磁場閉じ込め方式」とレーザーで核融合を起こす「慣性閉じ込め方式」がある。

このうち、Renaissance Fusionが採用するのは、磁場閉じ込め方式だ。炉の設計では、次の特徴をアピールする。

  • シンプルなステラレーター(磁場閉じ込め装置)
  • 上記を実現する高温超伝導体(HTS)コイル
  • 液体金属による炉の保護

プラズマを閉じ込める他社のステラレーターは、平たい言葉を使えばいかついフォルムとなっているケースが見られる。3次元的に磁場を形成する必要があるためだ。しかし、Renaissance Fusionは3D磁場を形成できる円筒形HTSコイルを利用し、シンプルなフォルムとなった。下の動画の終盤に登場するものだ。

Renaissance FusionのHTSコイルやステラレーターを取り上げる公式動画

反対に、このステラレーターを実現するためのHTSコイルは、複雑な形状だ。先程の動画では冒頭に登場する。こうした磁石をレーザーで彫刻のようにつくり出す技術も特徴として挙げられる。

共同創業者兼CEO兼CTOのFrancesco Volpe氏は物理学者で、過去、米コロンビア大学ニューヨーク校准教授などを務めた。2003年には、若手研究者を表彰するOtto Hahn Medalを受章した。

核融合が「当たり前」の世界を目指すとCEO

今回のラウンドは、フランスのメガバンクであるCrédit Mutuel系のファンドなどが主導した。

資金の使途として、まずHTSの「製造業者」になると発表。この言い回しから、磁場閉じ込め方式の核融合開発を行う他社に、自社のHTSを供給していく姿勢がうかがえる。その他、液体金属壁の進化、小規模での原子炉モジュールの構築が使途として挙げられている。

前出のVolpe氏は、起業時にインスピレーションを受けたとする小説『百年の孤独』の冒頭部分を挙げながら、次のようにコメントした。

「今では当たり前にどのキッチンにもある氷も、大規模に利用できるようになる前は魔法のように思えた。私たちが取り組んでいるのも同じような世界だ。つまり、今は核融合が魔法のように思えるが、ごく近い将来、当たり前になる。

実際、Renaissance Fusionは2030年代に核融合炉を商業化し、低炭素、低コストの発電を目指している」

なお、今回の資金調達とは別にRenaissance Fusionはフランス政府公的投資銀行(BPI France)より€10m(約16億円、約$11m)の助成金を受けており、公的研究機関との協力体制もプレスリリースの中で紹介された。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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