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自律型モバイルロボティクスのANYbotics AGがスイス経済賞を受賞

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 2020年9月、スイス経済フォーラムで自律型モバイルロボティクスのベンチャーであるANYbotics AGがスイス経済賞を受賞した。

 スイス経済フォーラムは毎年開催されている権威あるカンファレンスで、スイス国内外から著名人が講演者として招待されるほか、スイスの起業家を表彰して賞金を与える取り組みを20年以上行っている。プレゼンテーション、デモ、企業訪問という多段階の評価プロセスを通して、専門家の審査員が約200人の応募者から受賞者を選出した。

https://www.youtube.com/watch?v=BTHluv2YNwI
SEF(スイス経済フォーラム)が公開する動画への直リンク

自律型モバイルロボティクスを開発するANYboticsとは?

 ANYboticsは、四足歩行ロボットを商品化することを目的として、2016年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校ETHからのスピンオフとして設立された。この技術は2009年からETHで研究されていた技術が元になっている。

https://www.youtube.com/watch?v=P6y_dhFTgik&feature=emb_title
同社公開のYoutubeへの直リンク
ロボットが動いている様子がよくわかる

 用途は主に産業用の検査自動化である。例えば工場内やプラント内において、コンピュータビジョンと学習ベースのアルゴリズムにより、自律的に幅広い機器装置や計器の状態をデジタル化することができる。これまで人が定期的にゲージの値を読み取ったり、バルブの状態を確認したりしていた作業を自動化する。

 センサを搭載することで、例えばプラントの所定の位置でサーモグラフィーで温度分布を計測したり、音響による周波数分析を通して異常な振動を検出したり、危険なガスの漏れや濃度を検知することができる。

 同社は2020年6月に、ANYmalCというロボットの最初の生産バッチを顧客に提供した。陸上のエネルギープラントで機器を自律的に検査している様子が発表されている。

 初期生産は開始している状態であり、今後の同社のロボットの活用に注目である。


ー 技術アナリストの目 -
4足歩行自律ロボットの領域は、競合企業にボストンダイナミクスがいるが、ANYboticsはプラントや工場での自律検査に焦点をあてることにより差別化を図ろうとしている。ロボット市場は用途開拓が肝であり、汎用的にどのような環境でも活用できる、という究極的に汎用性のあるロボットは存在しない(またはそのように謳っていても顧客に響かない)。具体的なニーズやシチュエーションが決まれば最適化できる。この産業用プラント・工場の検査自動化というのはニーズが具体的で筋が良いように思う。
  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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