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BMW i VenturesがタグやIDを不要にするデジタル製造フィンガープリントのAlitheonへ出資

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 2020年1月、BMW i VenturesやShasta Venturesらが、光学AIソフトウェア技術を使って製品開発や製造プロセスにおけるトレーサビリティの高度化を行うベンチャー企業Alitheonに14.9m$の出資をした。

 今回は、あまり聞きなれないデジタル製造フィンガープリントという領域に切り込む、Alitheonについて解説したい。

製造デジタルフィンガープリントのベンチャー Alitheon社とは?

 Alitheonは2016年米国で創業したベンチャー企業である。製造デジタルフィンガープリントという、工場で生産されている工業製品において、物理的なIDやタグの付与が不要な、新しい形のトレーサビリティを実現しようとしている。

 工場で生産されている製品をカメラで画像キャプチャし、AIでサーフェイスアナリシス→静的マッピング→特徴量のデジタル化を経て、画像だけで製品のIDを付与するという新しい形のデジタルフィンガープリント技術で、FeaturePrintという。同技術により、工場のトレーサビリティにおいて、IDやタグのための新しい加工は不要となり、トレーサビリティが大幅に簡略化するという。

 同社の創業者CEOは製品の改ざん、偽造、セキュリティ向けのAI開発で30年の経験があり、今回の自動システムを開発した。すでに特許は34件保有しており、さらに多くの特許を申請中であるという。

 なお、工業製品だけでなく、空港のキャリーなどもIDを付与してトレースできるという。今後は、今回調達した資金を使って、防衛・航空宇宙、航空サービス、自動車、半導体、高級品、積層造形、製薬、政府の各セクターへ展開をしていく。

偽造品・模造品防止やトレーサビリティを容易に

 同社のようなID・タグを不要とするアプローチは他にあまり例を見ないものであり、非常にユニークなアプローチとなる。一般に、1Dや2D、またはホログラフィックな画像ですらコピーの可能性があり、こうしたやり方でタグを付与することは、どこまでも偽造・模倣可能性がある。

 同社は製品そのものの微細な特徴量をマシンビジョンで抽出し、それをデジタルでタグ化するため、こうしたハードウェア面でのコピーされる可能性が無い。なお、こうした興味深いアプローチを取る企業として、ほかにもう1社スコットランドにベンチャー企業が存在している。


ー 技術アナリストの目 ー
 業界的にはRFIDやタグなどでトレーサビリティが試みられているが、RFIDは高いといった課題もあり、必ずしも業界全体で進んでいるとは言えない。また製造部品においては、通常マーキングを使って品番をつけるダイレクトマーキングが主流である。一方で、今回のようなマシンビジョンによって製品の外観の微細な特徴量から、IDを付与するというやり方はこうしたハードウェア的なアプローチを不要にする可能性を秘めるものである。今後の技術進展やユースケースの拡大に期待したい。
  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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