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ウェアラブル汗センサからビタミンCを測定する技術が登場 ~カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究~

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 2020年5月、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、ウェアラブルで非侵襲性のビタミンCセンサーを開発したとニュースリリースで発表があった。本記事ではこの技術について解説したい。

ウェアラブル汗センサ×ビタミンC測定

 ユーザーが毎日の栄養摂取量(ビタミンC)と服薬遵守を追跡する、パーソナライズされた機能を実現できるようになる。この研究結果は、化学・生物学に関連するセンシング技術の査読付きジャーナルであるACSセンサーの2020年5月18日号に掲載された。

 この技術は、肌に張り付けることができる粘着性のパッチ型センサーである。パッチには、発汗を刺激するシステムと、ビタミンCを素早く検知するための電極センサーがついている。

 ビタミンCをセンシングするメカニズムは以下である。

 デバイスが保有している電極センサーには、酵素であるアスコルビン酸オキシダーゼを含んでいる。汗にビタミンCが存在する場合に、ビタミンCがこの酵素に反応することで、酵素がデヒドロアスクロビン酸に変換する。結果として生じる酸素の消費量により、デバイスで測定される電流量が変わり、ビタミンCを測定できるという。

 今回の発表にあたって、同研究チームは、4人の被験者を対象として実験を行っている。ビタミンCサプリメントとビタミンCを含むフルーツジュースを摂取した4人の被験者を対象と、2時間にわたってビタミンCの状況を追跡した結果、デバイスがビタミンのレベルとダイナミクスの変化を検出するのに非常に敏感であることが示されたという。

 同校の発表によると、個人が栄養をセンシングするためのウェアラブルセンサーの実用化に向けて、世界的な大手栄養会社DSMと緊密に協力しているとのこと。

ビタミンをウェアラブルで測定することの意味

 現存しているウェアラブルデバイスで、実用化レベルでビタミンを測定できるものはほとんどない。多くは血中のビタミン濃度を測るために血液採取が必要だったり、簡易尿検査であったりする。

 一部、日焼けの観点で紫外線を浴びる量をモニタリングするという観点でウェアラブルデバイスが実用化されており、浴びた紫外線量に応じて生成されるビタミンDを推計する製品というのが登場しているが、こうしたデバイスも体内のビタミン量を測定するものではない。

 ウェアラブルデバイスで、連続的に非侵襲でビタミンが測定できるというのは、デジタルヘルスケアの分野において、まだ見えないものを見えるようにする、新しい取り組みとなる。



  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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