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米国FDA(食品医薬品局)が9月に設立したデジタルヘルスセンターオブエクセレンスとは?

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2020年9月、米国FDA(the U.S. Food and Drug Administration:食品医薬品局)はデジタルヘルスセンターオブエクセレンス(DHCoE)を立ち上げたことを発表した。医療機器・放射線保健センター(CDRH)内に設置されたもの。

モバイルデバイス技術やソフトウェア技術、ウェアラブル技術などのデジタルヘルス技術の発展に向けた重要なステップとして位置付けている。

今回はこのデジタルヘルスセンターオブエクセレンスについて紹介したい。

デジタルヘルスセンターオブエクセレンスの役割

DHCoEの主な役割は、組織内外のステークホルダーが高品質なデジタルヘルス技術を患者に提供するため、FDA全体で行われている作業を調整・サポートしたり、製品を開発する事業者にも技術的なアドバイスを提供するもの。

また、デジタルヘルスケアの専門家ネットワークを構築、連携して、デジタルヘルス推進で生じる問題やその優先順位に関する知識・経験を、FDAスタッフと共有して仕組みを作っていくための共同コミュニティに参加する。

"デジタルヘルスセンターオブエクセレンスの設立は、最先端のデジタルヘルステクノロジーが米国で迅速に開発およびレビューされることを保証するためのFDAの取り組みの一部です。"(FDAコミッショナー Stephen M. Hahn, M.D.氏コメント)

"Establishing the Digital Health Center of Excellence is part of the FDA’s work to ensure that the most cutting-edge digital health technologies are rapidly developed and reviewed in the U.S.", said FDA Commissioner Stephen M. Hahn, M.D.

FDA 9月22日ニュースリリースより

FDAによると、このDHCoEはデジタルテクノロジーにおけるFDAの規制レビューに規制上のアドバイスとサポートを提供するものであって、販売承認の決定を行う責任は負わないという。つまり、あくまでFDAの承認活動全般をサポートする位置づけとなる。

なお、この組織では現在、ソフトウェアエンジニア、人工知能と機械学習のエンジニア、セキュリティ研究者、UI/UXのデザイナー、プロダクトマネージャーを人材として募集している。この中身から推測するに、非常に実践的で、FDAの規制を理解しながらも事業者を支援できる組織にしようという意図がうかがえる。

デジタルヘルスセンターオブエクセレンスの今後の予定

FDAは今後の計画についても発表している。

フェーズ1(2020年秋)は「意識を高め、利害関係者を関与させる」フェーズ。利害関係者へヒアリングを行ったり、FDAのデジタルヘルスに関する業務を拡大させる。

フェーズ2(2020年冬~2021年冬)は「パートナーシップを構築する」フェーズ。政策や規制のための戦略的パートナーシップを構築する。そして、外部のステークホルダー(技術を開発する事業者と考えられる)のためのリソースを確保。実践的なデジタルヘルスコミュニティを構築する。

フェーズ3(2021年冬以降)は「活動の構築と維持」フェーズ。戦略的パートナーシップを構築し続け、デジタルヘルスの規制フレームワークを更新・実装していく。

このように、計画の大枠も発表され、すでにデジタルヘルスケア領域の推進で米国がイニシアティブを取るという意思が強く表れている。今後の動きに注目だ。


― 著者の目 -
米国ではデジタルヘルスケア領域でFDAが強力なイニシアティブを取って、規制と新しい技術の調和を図っている。この1年で推進されるフェーズ2で、外部との戦略的パートナーシップも様々発表されると考えられ、具体的な動きとしてどのようなことをやっているのか、わかってくるだろう。

  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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