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自動車用のリューネブルクレンズアンテナ・レーダーを開発するLunewaveが7m$の資金を調達

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2020年11月23日、自動車用のリューネブルクレンズアンテナ・レーダーを開発するベンチャー企業のLunewaveが7m$の資金調達を行ったことを発表した。今回の資金調達は同社におけるシリーズAに該当し、取締役に元BMWエグゼクティブ・ポルシェCEOのPeter Schwarzenbacher氏と、元AptiveエンジニアリングVPのJames Zizelman氏が参画している。

自動車向けレーダーを開発するベンチャーLunewaveとは?

Lunewaveは2017年創業のアリゾナ大学発ベンチャー企業だ。リューネブルクレンズという球体形状の特殊なアンテナを元にしたレーダーセンサを開発している。

このリューネブルクレンズというのは、1944年にRudolf Luneburg氏によって提案されたもので、その歴史は古い。その球形状の屈折率分布レンズにより、通常は戦闘機などの軍事用途で、レーダー信号の特徴を増幅させるために利用される。球形という形状から来る制約により、自動車で使うにはサイズが大きすぎて適用が難しいと言われていた。

同社はこの課題に対して、ポリマー噴射による3Dプリントを用いて、サイズの小さいリューネブルクレンズを実現。自動車向けのレーダーに適用しようとしている。同社開発のレーダーは、方位角(水平面)平面で180度の視野を提供し、長距離や悪天候でも問題なく、現在市場で利用可能なレーダーと比較して6倍の解像度で車の周囲の物体を検出できるという。

https://www.youtube.com/watch?v=VM1bbk-40T8&feature=emb_title
同社公開のYoutubeへの直リンク
現行市場で流通しているレーダーとの比較実験の様子

今回の資金調達では、FM Capitalが主導し、Baidu、Proeza Ventures、Intact Ventures、Blue 9Capital、Tsingyuan Ventures等が参画している。

同社はエレクトロニクス大手業界メディアのEETimesによる”Top 100 Startups across the globe”にも選出されるなど、徐々にその露出を増やしている。今回の資金を活用し、自動運転・ADAS用レーダーの開発を加速させる。

(プレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
まだ現時点では初期のプロトタイプを自動車に乗せてみてデータを取得している段階だと思われるが、今回のSeriesAの資金を使ってPoCに向けた本格的な開発・及びPoCの実施が進むと想定される。技術面ではリューネブルクレンズという珍しいアプローチは面白いが現時点では公開されているデータが少ない。今後、元ポルシェCEOと元AptiveエンジニアリングVPが取締役会に参加するという点が大変興味深い。同社の技術ポテンシャルについての評価の現れとも見れる。

  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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