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息から脂肪代謝を測定し、ダイエットと健康の両立を支援する小型デバイスInvoy

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息・呼吸には重要な生体情報が含まれる。こうした呼吸をセンシングし、呼吸に含まれる化学成分を検知することで、様々な病気の疾患を早期検知したり、健康状態をモニタリングする技術が国内外で開発されている。

今回は、息から脂肪代謝を測定し、ダイエットと健康の両立を支援するデバイスを開発するベンチャーInvoyについて紹介する。

息から脂肪代謝を測定する技術 Inovoyとは?

現在のデバイス初期製品は2016年頃から

Inovoyは米国カリフォルニアで設立されたベンチャー企業である。CEOであり医用生体工学の博士号を持つLubna氏は、健康・医療用途向けの手軽な呼気分析計を開発するために同社を設立した。

同社の製品は呼気から脂肪代謝を測定するもので、初期製品は2016年にリリースされている。この時は、医療機関で使うような据え置き型のデバイスであったが、現在は個人が家で手軽に使うことができる手持ち型の小型デバイスを開発してローンチ。手持ち型のデバイスで測定した脂肪代謝のデータを解析し、アプリを通して自分の状態を把握することができる。そして専任のアナリストが毎日ユーザーのデータを確認し、目標を達成するためのタイムリーなアドバイスをアプリを通してフィードバックする。

https://vimeo.com/347375798
同社公開のVimeoへの直リンク

呼気に含まれるアセトンからセンシングする

同社が測定している化学物質はケトン体である。ケトン体は、脂肪の合成や分解における中間代謝産物。通常、血液中にはほとんど存在しないが、糖尿病や糖質制限などを行い、糖質(グルコース)が利用できない時に代わりのエネルギー源として使われる。

このケトン体の1つにアセトンがあるが、アセトンは、脳や筋肉のエネルギー源にはならずに呼気から排泄される。そのため、呼気からアセトンを検知することで、相関のある脂肪代謝の度合いを測定することができるという。

同社が狙うのは、肥満市場だ。OECDのデータによると米国は世界でも突出して肥満比率が高く、また年々肥満比率が増加している(ここでいう肥満の定義はBMI > 30 kg/m2)。実は、厚労省の統計によると日本においても肥満比率は微増傾向にある。先進国全体において肥満という生活習慣病の対象ユーザーは、潜在的に大きいと言える。

2020年9月にSeriesAで5.1m$を調達

同社はまだステルスモードであり、あまり多くを情報開示していない。しかし、Crunchbaseによると、2020年9月にSeriesAで5.1m$を調達することに成功している。また、既存投資家の1社は米国主要VCのKhosla Venturesである点は興味深い。同社に対して何かしらの可能性を見出しているのだろう。

呼気のアセトンを測るデバイスであれば、他にも世の中で市販されているものがある。しかし、まだ精度の面での信頼性は弱い。将来の糖尿病患者や生活習慣病人口の拡大をにらんで、様々な企業や大学がこうしたデバイスの実用化を狙っている。

(同社ウェブサイトはこちら



  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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