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自宅で健康診断ができるようになる可能性を秘めた米国ベンチャーEverlywell

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自宅で健康診断ができるようになる。それはディスラプティブ(破壊的な)領域として注目されている。特にCOVID-19により人が密集するところに行かず、自宅からでもできる、というのは追い風となるだろう。

自宅から何かしらの健康バイオマーカーを取得し、キットで取得したバイオマーカーを送り、バイオセンサーやAIにより健康状態を判定するというプロセスは、現在、複数のスタートアップが取り組んでいる。Evelywellはそのうちの1社だ。

健康診断キットのスタートアップEverlywellとは?

Everlywellは2015年に米国のオースティンで設立された。アドバイザリーボードには、ハーバード、MIT、グーグル、ニューヨーク大学の米国のトップ科学者を複数名迎えている。

同社の製品は、一般消費者が自宅で簡易検査を行うためのキットである。ユーザーはどのテストを行うのかWeb上で注文し、自宅に届いたキット使い指先から血液サンプルを取る(なお、そのサンプルはわずか5滴だ)。その取得した血液サンプルを同社のラボへ送り、解析され、結果が通知されるという非常にシンプルなプロセスである。なお、全ての検査結果については、独立した医師が確認するという。

https://www.youtube.com/watch?v=47btcYKECTw
同社公開のYoutubeへの直リンク
どのように指先から血液サンプルを取るのかよくわかる

同社は2020年12月3日にシリーズDで175m$の資金調達をしたことで話題になった。すでに総資金調達額は250m$にも上る。同社の資金調達を取り上げた記事は以下参照。

関連記事:自宅で健康診断ができるようになる、EverlywellがシリーズDで175m$の資金調達を完了

現在対象の診断テストは30種類以上

診断の種類には様々あり、Food Sensitivity Test(食物感受性試験)、甲状腺検査、屋内・屋外のアレルギーテスト、コレステロール・脂質テスト、睡眠とストレスのテスト、など30件以上のテストが可能となっている。

なお、下記の診断検査の多くが血液サンプルを元にした診断を行うが、一部は自宅で尿サンプルを採取し、診断を行うものもある。

同社が対象としている診断検査の例

  • 食物感度検査(Food Sensitivity Test)
  • 性感染症検査
  • 女性の健康検査
  • 甲状腺検査
  • ビタミンDと炎症検査
  • 代謝検査
  • ビタミンD検査
  • 卵巣予備能検査
  • HPV(ヒトパピローマウイルス)検査
  • 閉経後検査
  • 女性の生殖能力検査
  • 更年期障害検査
  • コレステロールと脂質検査
  • 男性の健康検査
  • 心臓の健康検査
  • 睡眠とストレスの検査
  • HIV検査
  • ビタミンB検査 等

普段の診療所での健康診断との主な違いは乾燥血

同社のラボ施設はCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments)認定を受けている。このCLIAは1988年に米国連邦政府が法律として制定した臨床検査室改善法により、米国内の全ての臨床検査室はCLIA認定を受けなければならないというもの。そのため、臨床検査室としての連邦が求める高精度な品質水準にある。

通常の健康診断で行う検査との主な違いは、分析を行うサンプルの違いとなる。通常の検査では静脈血液を採集するが、Everlywellが使うのは乾燥した血液スポットだ。

ただし同社によると、この乾燥した血液スポットによる診断は新生児検査や代謝スクリーニングなどの領域で使われてきた技術であり、決してそれ自体は新しいものではないという。同社はこの従来あった乾燥血液スポット検査の応用範囲を広げたところに新しさがある。

(同社HPはこちら



  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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