連続血糖モニタリングのための低侵襲の電気化学バイオセンサーを開発する米国ベンチャーBiolinq
別の記事でも触れているように、血糖値の連続モニタリングは非常に巨大な市場ポテンシャルが存在している。現在市場で展開されているのは指先の血液サンプルを採取して分析するタイプの従来型のものか、皮膚内にデバイス・センサを埋め込むインプラント型か、マイクロニードルのパッチ型のセンサか、いずれかとなっている。
特にマイクロニードル型のデバイスは急成長しているセグメントとなっており、AbbottのフリースタイルリブレやDexcomのデバイスなど、その利便性と実用性からユーザーからの評判も高い。
すでに市場で市民権を得ているこうしたデバイスであるが、まだスタートアップの参入余地はあるとみて、チャレンジする企業がいるようだ。米国サンディエゴを拠点とするベンチャーのBiolinqは、独自のマイクロニードルを使った電気化学バイオセンサーを用いた、より使いやすいデバイスの実用化を目指している。
創業から8年でようやく実用化手前まで来ている
Biolinqは2012年にElectrozyme, LLCとして設立された米国サンディエゴのベンチャー企業。実に設立から8年以上が経過しているが、現在ようやくCGM(連続グルコースモニタリング)デバイスが実用化手前まで来ている状況だ。
数cm角ほどの同社の小さなデバイスは、装着負担を可能な限り小さくし、利便性が高く使いやすいユーザー体験を目指している。
2020年夏に開催された糖尿病におけるデジタルヘルスのイノベーターが集まるカンファレンスD-Data ExChangeで同社がプレゼンテーションでその技術の解説をしていた。
同社による解説によると、基本的には同社のデバイスは他のマイクロニードル型のCGMと同様に、皮膚下の間質液にマイクロニードルを通し、電気化学バイオセンサーでそのグルコース量を読み取る。間質液のグルコース濃度と血中グルコース濃度は高い相関があるため、血糖値を推計することができるという流れとなっている。
では他社とどのような違いがあるのか、という点について同社はマイクロニードルの形状について触れている。光学マイクロスコープでDexcomのマイクロニードルとBiolinqが開発したマイクロニードルを比較してみると、その並び方やニードル形状が異なるようで、同社のマイクロニードルはパッチを皮膚にあててニードルを刺しても何も感じないという。
現在シリーズAが完了、経営体制を強化
同社はこれまでに資金調達総額で18.3m$もの資金を集めており、現在シリーズAが完了している段階にある。シリーズAは2019年に実施され、糖尿病1類を治療するソリューションに特化したファンドのJDRF T1D Fundや、イノベーティブな医療技術に出資をするVCのAphelion Capitalなどが参画した。直近は2020年3月にデッドで3.6m$の資金調達を行っている。
また同社は最近2020年11月に新しいCEOであるRichard Yang氏を迎え入れて経営体制を強化している。Yang氏はメドトロニックやDexcomで連続グルコースモニタリングの立ち上げをリードした人物であり、この業界に精通している。そのYang氏が同社に加わったのは同社の技術が有望であることを示唆する。
2020年6月には米国糖尿病学会で臨床研究の結果を発表も行った。この発表によると、同社のデバイスで測定した皮膚下間質液中のグルコース濃度が、静脈血糖値と高い相関関係を示したという。まずは第一弾の臨床研究は順調に進んでいるようだ。
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