メンタルヘルスをウェアラブルで取得する生体データを使って診断する技術を開発するMedibio
メンタルヘルスの領域は近年注目されており、コロナウイルスなど激変する環境変化による影響から、2021年は増々ホットな領域になると考えられる。
そんなメンタルヘルス領域で、どのようなスタートアップが有望か挙げるとすると、間違いなく有望企業群に入るのがMedibioだ。オーストラリア証券取引所に上場している同社であるが、他の企業には無いとてもユニークな技術を開発している。今回はそんな同社を紹介したい。
オーストラリア企業Medibioとは
同社は1998年にBioProspect Limitedとして設立され、2014年にオーストラリア証券取引所に上場するとともに、現在のMedibio Limitedへ社名が変更された。
メンタルヘルスをウェアラブル生体データで診断するとは
Medibioが着目したのはメンタルヘルスの診断は現在、医師により決められたガイドラインに沿った問診での主観評価になっている、という課題だ。医師は患者とのやり取りの中で主観的に判断を下さなくてはならないため、診断名は場合によっては医師によって異なることもある。そのため、メンタルヘルス領域では客観データから診断を行う方法が模索されている。
Medibioが開発しているのは、一般消費者向けにすでに出回っているウェアラブルデバイスであるFitbit、Garminのデータと接続し、心拍数、活動量、睡眠データを解析することで、客観的にメンタルヘルス状態を判定する技術だ。
同社の技術の出自は、西オーストラリア大学で精神医学と生体データの研究を行うハンススタンプファー教授との共同研究開発から来ている。ハンス教授は、サーカディアン心拍数(CHR)の変動性と独自のアルゴリズムを利用して精神障害の臨床診断における定量化可能な尺度について長年研究をしており、Medibioのアドバイザーにも入っている。
非医療用では精神健康スコアを使ったメンタルヘルスプログラムが展開
非医療用途でローンチ済みのilumenは、FitbitとGarminから取得な生体データを元にして、7日間の計測を経た後に精神的な健康スコアを判定する。Medibioはこのilumenを使って企業向けのプログラムとして提供するBtoBビジネスを展開しており、現在、BtoC向けのアプリも開発中となっている。
このilumenは2019年から、デザイン・エンジニアリングのグローバル企業Stantecのオーストラリア・ニュージーランドオフィスで試験的に導入され、無事に成功事例となり、2020年5月からは従業員の福利厚生として展開されている。いわゆる健康経営・福利厚生市場でのビジネスモデルと言えるだろう。
医療用では現在FDAの承認へのチャレンジ中
同社は次に、ソフトウェアでFDAの認可を取得して、医療用途としても技術を展開しようとしている。MEBと呼ばれるこの技術は、基本はilumenと近い技術であり、睡眠ステージを判定し、うつ病診断の補助ツールとして使われることを想定している。ilumenがあくまで健康(ウェルネス)領域であるのに対し、MEBは医療現場でのツールとして使われることを目指しているようだ。
これはディープラーニングアルゴリズムにより、ウェアラブルデバイスから取得できる生体データや睡眠データから、睡眠ステージの判定やうつ病の状態診断を行うというもの。MEB-001という全体のソリューションと、MEBSleepという独自の睡眠判定アルゴリズムから構成される。
同社の技術はFDAにとっても有望視されており、FDA Breakthrough Device Programに選定されている。
FDAブレークスルーデバイスプログラムについてはこちら:
[nlink url="https://atx-research.co.jp/2020/12/13/fda/"]
2020年12月に、FDAにアプライした結果として、認可の取得に向けたFDAからのアドバイスが提供されたことがMedibioから発表されている。同社はできるだけ早期にFDAとのミーティングをセットし、認可取得に向けて詳細を詰めていくという。
メンタルヘルスの市場概観について整理したものはこちら:
[nlink url="https://atx-research.co.jp/2020/10/13/mental-health/"]
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