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【CES2021】空飛ぶ車・eVTOLはGMの参入が発表、同時にフィアットクライスラーも参入

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CESで空飛ぶ車・eVTOLの発表がされたのは、CES2016前後からだ。以降、毎年のように空飛ぶ車やエアタクシーに関する発表が続いている。

今年はオンライン開催であったこともあり、さらにこのエアモビリティの領域は今はすでに現実的な実証実験が盛んにおこなわれる実用化に向けた準備フェーズになったこともあり、パーソナルエアモビリティの主要プレーヤーからの発表は無かった。

CES2021ではGeneral Motors、そして日本のベンチャー企業であるSkydriveが大きな発表だったように思う(ただしSkydriveはすでに日本で発表されている内容)。

またCESでは発表は無かったが、同日でFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)からもパーソナルエアモビリティへの参入が発表された。これら3社の発表を見ていきながら、過去のCESからのパーソナルエアモビリティの変遷を見ていきたい。

GM:eVTOLのコンセプトを発表、実用よりは広告色が強い

General Motorsはその1時間弱の基調講演において、同社のEVにおける全体的な取り組みについて語っていた。その中の1つのパートとして、eVTOLのコンセプトについて発表をしている。

画像クレジット:General Motors CES2021映像より

キャデラックのパーソナルドローンとして紹介されたこのコンセプトモデルは、回転翼を4つ備え、90kWhのバッテリーパックと電動モーターによって駆動する。2人乗りの機体は、ビルの屋上から屋上を移動する。コンセプト映像でも、都市部のビルの上で飛行する様子が描かれていた。同社は機体の詳細や実用化時期等についてはまだ明らかにしていない。

すでに多くの企業が参入を表明しているこのパーソナルエアモビリティの領域において、今回のコンセプト映像は特に新しいものではない。

むしろ、都市部におけるビルの屋上から屋上を移動するというのは、ヘリポートの整備や実質的な都市部におけるこうした移動ニーズのがあるのかなど、実用面でやや疑問が残る。すでにLiliumやJoby、EHangらが実際に有人飛行で飛ばしている中、今回の発表内容はやや広告色が強い内容と言えるだろう。

SKYDRIVE:発表済みの有人飛行機体の新しい動画を発表

日本におけるパーソナルエアモビリティで最も先端にいるのがSKYDRIVEだ。日本初の有人飛行を成功させた同社は、今回CESで発表済みの有人飛行機体の新しい動画を発表している。

https://www.youtube.com/watch?v=ZSYlB5cl9zw
同社公開のYoutubeへの直リンク

同社が開発しているのは、小型の少人数でのパーソナルフライトを実現する機体であり、非常にコンパクトであることが特徴だ。現時点では操縦者が乗っているが、将来的には自律飛行を実現するという。

同社は2025年の大阪万博でサービス実証を行うことを目指している。

上記については、すでに日本で発表されている内容を、改めてCESで出展して世界に向けて発表をしたというものとなっている。

FCA:機体製造でのポジショニングで参入

FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)はCESでは触れていなかったが、CES期間中の1月12日に、パートナーとなる企業のArcherからこの分野での業務提携が発表された。

米国カリフォルニアを拠点とするパーソナルエアモビリティを開発するベンチャー企業のArcherは、2023年に生産を開始することを目的として、大量のeVTOL航空機を製造すること、そして機体製造はFCAが行うことを発表している。

画像クレジット:Archer

この機体は4人乗りで、最大150mph(約240km/h)で60マイルの距離を飛行することができる。なお、2021年初頭に発表される最初のeVTOL航空機において、FCAがコックピット設計を手掛けるという。

FCAは自社でeVTOLを設計・開発・生産を一貫するのではなく、コクピット設計と機体生産というバリューチェーンで参入を表明したことになる。

厳密にはFCAがCESで発表をしたわけではなく、FCAからプレスリリースが出ているわけでもないため、FCAにとっての位置づけとしてはまだそこまで重要なものではないように見える。

CESにおけるパーソナルエアモビリティの動向

過去のCESも含めて、パーソナルエアモビリティの領域でどのようなプレーヤーが発表をしてきたか、整理してみよう。

CES 企業 内容
CES2016 EHang 1人乗りの完全自律飛行機体のプロトタイプが展示
CES2017 Bell エアタクシーキャビンを披露
CES2018 Uber/Bell 共同設計した機体の公開やUberとの提携などの発表
Workhorse 有人の電動オクトコプターが北米初公開
CES2019 Bell Bell Nexusという最新機体を発表
CES2020 Bell 都市におけるエアモビリティの活用イメージをデモ
Uber/Hyundai 現代グループがUberのエアタクシーPJTに参加発表
CES2021 GM エアモビリティへの参入とコンセプト映像の発表
当社作成

上記のように、CESで毎年話題になってきたのはBellやUberであった。Bellは毎年その大きなヘリコプター型の展示を行い、たくさんの人だかりを呼んでいた。また、Uberは2023年までにエアタクシーサービスの実証を行うプロジェクトを立ち上げ、業界関係者を巻き込んでCESを活用して話題作りをしていた。このUber Air TaxiプロジェクトにBellやHyundaiなどの主要プレーヤーが参加している。

こうしてみると、この2-3年のCESにおけるパーソナルエアモビリティの領域の話題は主にBellやUberによって作られてきたことがわかる。残念ながらUberはこのコロナウイルスの影響により事業再編を行い、自社でのエアタクシー開発は断念した。こうした動きもCES2021におけるエアモビリティ関連の発表や出展に影響しているだろう。

Bellはすでにコンセプトの発表のフェーズは過ぎ、実用化を目前としたフライト実証に活動のフォーカスをあてている。過去出展していたが最近は出展が無いEHangも中国での有人飛行実験が盛んになっている。コンセプトをぶち上げて話題を集める初期フェーズから、実証フェーズに移ったことを示しているだろう。

来年のCESでは、いよいよ2023年あたりで実際に行われるエアモビリティのサービス実証に向けた発表があることを期待したい。


Joby Aviation、EHang、Volocopter、Liliumなど空飛ぶ車の主要ベンチャー企業の全体像について知りたい方は、こちらで特集記事を作成しているのでご参考

参考記事:(特集) 空飛ぶ車・エアモビリティの世界ベンチャー企業動向


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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