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NASAがCOVID-19を防ぐ実証PJTとしてFitbitの職場向けツールを導入

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2021年2月10日、Fitbitは、NASAがCOVID-19の蔓延を防ぐことを目的としたパイロットプログラムの一環で、Fitbitデバイスと職場向けツールであるReady for Workソリューションを導入することを発表した。

Fitbit×NASAの実証プロジェクト

今回のパイロットプロジェクトの一環として、NASAの米国6拠点でミッションクリティカルな作業をオンサイト(職場等)で行っている1,000人の従業員が、Fitbit Charge 4 TMデバイスを使い、Fitbit Ready for Workという職場の健康モニタリング用ツールを導入するという。

なお、この1,000人には、将来の宇宙ミッションに不可欠な150人の宇宙飛行士とNASAの従業員が含まれている。

「パンデミックは、人々がよりよく眠り、よりよく食べ、より多く動き、健康とウェルネスを管理するために必要なサポートを提供する上でFitbitが果たすことができる重要な役割と、特定の健康指標から病気を特定する可能性を強調しています。これは、COVID-19危機の最中に特に重要です。」と、GoogleのFitbit Health Solutionsのマネージングディレクター兼ゼネラルマネージャーであるAmy McDonough氏は述べている。「NASA​​と協力して従業員をサポートし、Fitbit製品とサービスへのアクセスを提供して、パンデミック時の健康と福祉を、従業員がよりよく理解し、管理できるようにしたことを誇りに思います。」

職場向け健康管理ツール Fitbit Ready for Work

Fitbit Ready for Workソリューションは、2020年6月にローンチされた、職場向けの健康管理ツールだ。ユーザーは、Fitbitデバイスから取得可能な主要な健康指標(安静時の心拍数、心拍数の変動、呼吸数)をアプリを通して閲覧できるほか、毎日の自己申告ベースで症状、体温の記録、COVID-19曝露状況を入力することで、このツールは、従業員が出社をするべきかどうかを決定するのに役立つガイダンスを伝える。

また、雇用主となる企業は、このツールから取得されるデータから、ダッシュボードを通して登録と利用の傾向や従業員に症状またはCOVID-19への曝露の兆候があるかどうかに関する指標などを閲覧できるという。

Fitbitを使った心拍などの生体データを用いてCOVID-19の感染兆候を検知する取り組みが研究されている。2020年11月に公開された初期研究結果においては、通常呼吸数と心拍数は病気によって上昇し、心拍変動(HRV 注1)は低下することから、こうした感染の初期スクリーニングに利用できるかどうかの可能性が示唆されている。そのためFitbitの今回のプレスリリースでも、ウェアラブルから測定される生体データと自己申告ベースの情報を組み合わせることで、役立つ毎日のガイダンスを提供できるとしている。

注1) 心拍変動(HRV)とは、Heart Rate Variabilityと言い、それぞれの心拍間のミリ秒単位の一定の変動のことを表す。このミリ秒レベルのゆらぎを解析することで、自律神経系の評価に利用できるとされ、ストレスモニタリングや様々な循環器系疾患の予測などに使えないか模索されている。

ウェアラブルを使ったCOVID-19検知の研究はこちらも参照:

[nlink url="https://atx-research.co.jp/2020/10/01/stanford-healthcare-innovation-lab/"] [nlink url="https://atx-research.co.jp/2020/11/19/fitbit-covid19/"] [nlink url="https://atx-research.co.jp/2020/12/25/dod-covid19-phillips-biointellisense/"]

ただし、上記の記事にもあるように、現時点ではまだウェアラブルを使った生体データによるCOVID-19の感染スクリーニングは研究中のものである点は注意したい。2020年11月に公開された論文(※1)においても、あくまでCOVID-19の発症予測として心拍や呼吸、心拍変動が、有用な指標である可能性が示唆されたという段階である。

 


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


Fitbitのプレスリリース中でも、Fitbitデバイスを使ったCOVID-19スクリーニングの可能性、そして早期検出アルゴリズムの研究を続けていることを強調しており、ゆくゆくはこうしたアプリ上で、COVID-19の感染可能性のようなものをデータにより提示をするような機能を搭載することを想定しているのだろう。まずはデータ+自己申告ベースで職場の健康モニタリング機能が実用化され始めているが、NASAでの1,000人の取り組みがどうなるか、有用性が確認されれば、こうしたBtoB向け健康モニタリングビジネスが、更に拡大する可能性を秘める。

参考文献:

※1 Natarajan, A., Su, HW. & Heneghan, C. Assessment of physiological signs associated with COVID-19 measured using wearable devices. npj Digit. Med. 3, 156 (2020).


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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