スイスのEPFLとXsensioが汗からコルチゾールを検出できるウェアラブルチップを開発
汗から生体情報をセンシングするチップ(Lab-on-SkinTM)を開発するXsensioと、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は、汗からコルチゾールを検出できるウェアラブルチップを開発したと、2021年2月15日に発表した。
汗からコルチゾールを検出
Xsensioは2014年にスイスで設立されたベンチャー企業。Adrian Ionescu教授が率いるEPFLのナノエレクトロニクスデバイス研究室(Nanolab)との共同開発により、事業化を推進している。今回の研究成果においても、EPFLとNanolabの共同研究により生まれたものとなっている。
人間の汗に含まれるコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度を測定することで、将来的には、医師が燃え尽き症候群や肥満などのストレス関連の状態をよりよく把握するのに使われる可能性があるという。
コルチゾールの検出から見えるもの
コルチゾールはストレスホルモンとも言われている。人体にとって非常に大事な役割をしている。
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモンです。
ヤクルト中央研究所、健康用語の基礎知識より引用
コルチゾール分泌は概日リズム(体内時計)とも関係していると言われ、午前中に最高レベルになり、夜に最低レベルになる。一方で、持続的なストレスがこうしたコルチゾールの適切な分泌を妨げるとも言われており、コルチゾールを連続的にウェアラブルで測定することができれば、身体的・精神的な健康状態を分析するのに役立てることができる。
アプタマー修飾されたグラフェンを使用
今回の汗センサデバイスを開発するにあたり、EPFLとXsensioは特定化合物と結合するアプタマー修飾されたグラフェン電極を用いている。
グラフェンは近年、バイオセンサとして様々な研究で使われており、安定した素材であるために溶液の中で電圧をかけても酸化せず、汗や唾液、血液などの検体にも適用が期待されている1)。また、その優れた電気伝導性から、高感度なセンサが実現できる2)。一方で、グラフェン自体には特定物質を選択的に吸着・結合させる機能は無いため、アプタマーと言われる1本鎖DNAをグラフェン上に修飾し、コルチゾールを選択的に検出する。
EPFLからの発表によると3)、今回開発したシステムは、概日周期(サーカディアンリズム)を通して継続的にコルチゾール濃度を監視するためのものであり、こうしたシステムは他には無いという。さらに、ローザンヌ大学病院(CHUV)と、患者に対して継続的なコルチゾールモニタリングシステムを試すためのブリッジプロジェクトを立ち上げたことも発表した。
(今回のプレスリリースはこちら)
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参考文献:
1) 注目の新材料「グラフェン」をバイオセンサとして利用する, 徳島大学(リンク)
2) Takao ONO, Yasushi KANAI, et al. Lab on a Graphene : Biosensing Application of Graphene Field-Effect Transistor, 表面科学 Vol. 38, No. 9, pp. 466-472, 2017
3) Sheibani, S., Capua, L., Kamaei, S. et al. Extended gate field-effect-transistor for sensing cortisol stress hormone. Commun Mater 2, 10 (2021). https://doi.org/10.1038/s43246-020-00114-x
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