オンデマンド製造AIプラットフォームのXometryがナスダックでの上場手続きを完了
5,000社を超える精査された機械加工会社をネットワーク化し、オンデマンド製造のためのプラットフォームを構築したXometryが、米国新興市場のナスダックでの上場手続きが完了したことを7月2日に発表した。
オンデマンド製造を実現するAIプラットフォーム
Xometryは2013年に米国で設立されたベンチャー企業だ。同社は5,000社を超える機械加工サプライヤをネットワーク化したオンデマンドプラットフォームを構築している。
CNC機械加工、3Dプリント、射出成型、板金加工、ウレタンキャスティング、素材購入など、70以上の材料と15のプロセスを使用した機械加工(または材料購入)が可能となっている。
米国46州、ヨーロッパ、アジアにまたがったXometryのサプライヤネットワークにより、プラットフォームから発注して世界の機械加工メーカーの生産能力に即座にアクセスすることができる。
同社のプラットフォームの特徴は2つある。1つは上記で触れているように5,000社もの多様な加工とエリアをカバーするサプライヤネットワーク。なお、米国だけで3,000社超の機械加工企業が登録されており、現時点では米国のカバー率が高い。
そして2つ目は、図面をアップロードすると即座に見積もりを行うAIだ。
即座に機械加工の見積もりを実現する機能を実現
さらに価格は納期に応じて複数のオプションとして提示される。図面をアップロードして算出される時点では最初の荒見積もりとなっており、その後画面上で、素材や加工方法、許容寸法精度などを加えていくことで、見積もり金額は修正されていく。ユーザーにとって最適な価格・精度・納期でAIがサプライヤを自動で選定し、ユーザーが発注をかけた段階で、指定された条件(価格や寸法精度、納期等)で加工が可能なサプライヤに案件提示が行われ、サプライヤがそれを受託すれば取引が成立する。
同社はこのアルゴリズムを構築するためのデータサイエンスに非常に力を入れており、ディープラーニングをベースとしたこのアルゴリズムは、アップロードされた3D CADファイルを分析し、製造可能性の情報を正確にレンダリングし、パーツの複雑さを評価する。このアルゴリズムを通じて、これまで同社のプラットフォームを通して800万回の加工案件がサプライヤへ提示されているという。
BMWやGE、ボッシュらも出資
Xometry社には、BMWやGE、ボッシュ等のCVCもこぞって出資を行っている。
最も直近では2020年9月にシリーズEで75m$の資金を調達していた。出資者はRobert Bosch Venture Capital、BMW i Ventures、Dell Technologies Capitalなど、各種VCやファンドに加えて大手事業会社のCVCが出資を行っている。
参考:【特集】欧米自動車OEMのスタートアップ投資動向2020(後編)
また、GE Venturesも2019年のシリーズDで参画しているがシリーズEでは追加出資は行わなかったようだ(GEはGE Digitalがあまり上手くいかず2019年に分社化を行ったこともあり、こうしたデジタル分野への投資に影響している可能性がある)
Xometry社は、シリーズE実施時点で累積197m$もの資金を調達している。
日本でもオンデマンド製造のベンチャーが注目
なお、日本においてもこのオンデマンド製造の流れは注目されており、元来は3Dプリンタの加工が可能な会社をネットワーク化したベンチャー企業であるカブクが話題になり、この領域を切り開いた。
最近でも、機械・装置類の板金加工品や切削・金属加工品を一貫して生産するオンデマンド製造プラットフォームのキャディ社などが非常に注目されている。
同社HPはこちら
日本でもキャディやLinkersなどの製造加工分野でのデジタル化は、中小企業の加工技術が強い日本の産業構造上、非常に重要になっています。Xometryのように世界で先行するベンチャー企業が先に上場することになりました。まだ同社の投資家向けプレゼンテーションの準備が出てきておらず、詳細資料が無いため、今後追加情報発表のタイミングで、また加筆したいと思います。
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