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テスラが開発する人型ロボットTesla Bot(Optimus)

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テスラの新型人型ロボットTesla Bot(開発コードOptimus)は、2023年に新しいモデルが発表された。

Tesla Botは2021年時点ではコンセプトのみの発表であったが、2022年のTeslaのAI Dayで初めて実機が公表されている。この開発スピードの速さを考えると、テスラはこのプロジェクトの優先度を高くしていることがわかる。

この記事では、Tesla Botの基本情報から、開発元であるテスラの概要、さらには電気自動車(EV)とロボットの関連性、そしてTesla Botの用途や商業化について詳しく解説する。

テスラの新型人型ロボット Tesla Botとは

Tesla Botは、テスラのCEOであるイーロン・マスクが発表した人型ロボットで、通称「Optimus」と呼ばれている。

このロボットは、「人間がやりたくないことをなんでも」行うことを目指しており、最終的には家庭やオフィスでの「繰り返しや退屈なタスク」を行うことが想定されている​。

つぎに、Tesla Botの基本的なスペックや、人型ロボットとしての新しい点について解説する。

Tesla Botの解説

Tesla Botの基本スペック

現在分かっているTesla Botのスペックを以下に示す※2 ※3 ※4

・身長:173cm
・重量:57kg
・最大歩行速度:5MPH(8km/h)
・可搬重量:45ポンド(20kg)
・バッテリーパックの容量:2.3kWh
・8個の「オートパイロットカメラ」を搭載し、周囲の環境を認識する
・AIによるオートパイロット
・オーディオサポート
・ハードウェアレベルのセキュリティ

Tesla Botは全身に28個のアクチュエータが配置されている。

人間は200以上の関節自由度があると言われているが、人型ロボットに人間並みの数のアクチュエータを配置するのは、現実的には困難である。そのため、Tesla Botは、人型ロボットとして実用度の高い自由度に絞ってアクチュエータを配置しているといえる。

モータと減速機構を一体化したアクチュエータは、テスラで自社開発している。自社開発することで、ロボットのダイナミクスに最適化されたスペックと、人間サイズの筐体に収まるコンパクトさを両立している。

胴体にはバッテリーパックとセントラルコンピュータが搭載されている。テスラのAI Day 2022の発表によると、Tesla Botには「オートパイロット」の機能が備わっており、これはテスラの電気自動車(EV)の自動運転技術を活用したものであるとのこと。

AI Day 2022のデモでは、Tesla Botが周囲の環境を認識し、障害物を避けつつ移動する様子が見られる。

https://youtu.be/suv8ex8xlZA?t=531
Tesla AI Day in 23 Minutes (Supercut) (2022)

Tesla Botができること

以下に、2023年6月現在のデモ動画からTesla Botができることを記す。

・バッテリー駆動で自律二足歩行できる。
・周囲の環境を認識し、障害物を避けながら移動できる。
・周囲の環境を記憶し、マッピングできる。
・人の動作をAIに教示できる。
・自動車部品のような物体を把持し、箱に入れる。

https://www.youtube.com/watch?v=XiQkeWOFwmk
Tesla Bot Update

Tesla Botの新しい点

ここでは、Tesla Botが従来の人型ロボットと比べて新しい点を記載する。

テスラが構築してきたAI技術を活用

これまでの人型ロボットは、それ自身が最新技術の塊であり、ロボットに使われる技術が自動車などの製品に活かされることが想定されていた。そのためロボット技術への取り組みというのは将来的な低速車両の制御や、各種要素技術の蓄積という目的感も強かったように見える。

一方、Tesla Botの場合、すでにテスラが自動車領域で蓄積してきた技術が転用されており、この点が従来の人型ロボットへのアプローチと異なる点である。

テスラはこの点を「我々は現実世界で利用するAI技術で最も進んでいる」と表現している。

車を動かすAIと同じで、車は車輪のついたロボットで、こちらは足のついたロボットだと考えてください。現実世界のAIを解決していく中で、現実世界のAIを解決する上でテスラの右に出る者はいないと思いますが、その同じコンピューターとソフトウェアがオプティマスに搭載されています。

Tesla 2023 Investor Dayでの講演発言より

280万円未満という値段設定

Tesla Botは、「車より安く、おそらく20,000ドル未満になるだろう」と言われている※3。日本円で、およそ280万円未満である。

この価格は2足歩行の人型ロボットとして興味深い金額である。

例えば、川田工業の産業用ヒト型ロボット「NEXTAGE OPEN」の価格は770万円程度であるが、産業用ロボットとしての設計となっている※5。また、現在ではあまり見かけなくなってしまったソフトバンクのペッパーは約118万円であるが、技術的なハードルが高い2足歩行ではなく、車輪で動く形にして、腕や手なども作業で使うことは想定しない、システム構成が非常にシンプルな形である。

Tesla Botはあくまで最初は、製造現場でのモノの運搬や設置などの実用的なユースケースを想定しているはずで、この280万円前後のコスト感との費用対効果が評価されることになる。

モータと直動機構を一体化した自社設計のアクチュエータ

Tesla Botのアクチュエータは、モータの回転運動を直線運動に変換するタイプがある。このアクチュエータは、モータと直動機構が一体化されており、非常にコンパクトにまとまっている。

(注)あくまで参考としてであるが、このアクチュエータの動作原理を次のように推測することができる。

  • モータの回転子(ロータ)をボールねじのナットにしている
  • ボールねじの原理により、ロ―タ(ナット)が回転することでロッドが直線運動する
  • ロッドは出力軸とつながっている

Tesla Botのアクチュエータチームの動画に、この機構が映っている。

画像引用)Tesla Bot | Actuators Team※6

動画から推測した直動機構の仕組みを解説する。画面右側の中空シャフトがロータで、中空の内径にはねじ上の溝が掘られている。画面左側のシャフトに付いているそろばんのコマのような部品がおねじの役割を果たし、中空内径の溝にかみ合ってボールねじの機構になる。

Tesla Botのアクチュエータの機構は、次の動画でもわかりやすく解説されている。

https://www.youtube.com/watch?v=5MNz0YyqgLY&t=615s
Tesla Team is Building INSANELY ELEGANT Motors for TeslaBot! Uncovering Details with Scott Walter

Tesla Botの今後:その用途や商業化について

2023年6月現在、Tesla Botはまだ開発段階で、自律移動や物体の把持などの機能を洗練させる途中のフェーズにある。

商業化について、イーロン・マスクは「できれば2023年に最初のモデルの生産を始めたい」とTesla Cyber Rodeo eventで発言した※7

また、過去にはTEDでの1on1インタビューの中で、イーロン・マスクは最初の用途は製造現場での利用になるが、最終的には家庭でも利用できるようにするのがビジョンであると言及している。

人型に限らずサービスロボットの実用化は、これまでも様々な企業が実用化を目指して失敗してきた領域でもある。そうした中で、Teslaがどう事業化していくのか、現時点ではまだほとんどのことが未知数である。

テスラがTesla Botの商業化をどう進めるか、それが社会にどう影響を与えるかが今後注目される。


参考文献:

※1 Tesla Bot Update、2023年5月(リンク

※2 Tesla Robot: News, Rumors, and Estimated Price, Release Date, and Specs、2023年5月(リンク

※3 Tesla AI Day in 23 Minutes (Supercut) (2022)、2022年10月(リンク

※4 Tesla Bot a.k.a Optimus(リンク

※5 スマホ化するロボット、流通する制御ソフトで機能拡張、2014年1月(リンク

※6 Tesla Bot | Actuators Team、2023年1月(リンク

※7 Tesla is aiming to start production of its Optimus humanoid robot in 2023、2022年4月(リンク


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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