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AIスタートアップのAnthropicがAmazonより約6185億円を追加調達。AWSを生成AIモデルトレーニングのメイン基盤に

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OpenAIの元メンバーが設立した米国のAIスタートアップであるAnthropicがAmazonから$40b(約6185億円)を調達したと、2024年11月22日に発表した。

以前のAmazonからAnthropicへの投資額は同じく$40bで、今回の追加調達によりAmazonから確保した金額は累計$80b(1兆2369億円)に達している。

AIの「安全性」を追求

Anthropicは、OpenAIの元研究担当副社長であるDario Amodei氏とDaniela Amodei氏兄妹を含むOpen AIの元従業員らが共同で2021年に設立した、AI開発のスタートアップ企業。

Adomei兄妹。左がCEOのDario氏(Anthropicメディアアセットより)

CEOをDario氏が務め、Daniela氏は社長を務める。他、共同創業者兼最高科学責任者(CSO)のJared Kaplan氏もOpenAI出身である。

Anthropicが追求するのは「AIの安全性」だ。2023年3月に発表したステートメントは4万字を超える内容で、AIの現状、今後10年ほどで起こるであろうこと、将来的なシナリオを提示。「現在利用可能なシステムが差し迫った懸念を引き起こすとは考えていないことを明確にしておく」と不安をあおるのを避けつつ、悲観的なシナリオの想定では次のような意見を表明した。

「AI の安全性は本質的に解決不可能な問題だ。これは、私たちよりも知的能力がはるかに高いシステムに対して、制御したり値を指示したりができないという経験的事実に過ぎない。そのため、非常に高度な AI システムを開発したり導入したりすべきでない。非常に強力な AI システムが作成されるまでは、最も悲観的なシナリオも楽観的なシナリオのように見える可能性があることにも留意いただきたい。悲観的なシナリオを真剣に受け止めるには、システムが安全であるという証拠を評価する際に謙虚さと注意が必要となる」

こうした懸念から、新モデルを公開する際のプレスリリースには「安全」「堅牢」「操縦可能」といった文言が目立つ。

2023年3月には、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)の「Claude」を一般公開。最新モデルはその1年後に公開された「Claude 3 Haiku」だ。

すでにAWSユーザーは利用可能

今回の追加投資と同時に、AnthropicとAmazonは、AWSを主な生成AIのモデルトレーニング基盤とすることに合意した。さらに、AWSのAnnapurna研究所において、ディープラーニングのトレーニング専用チップであるAWS Trainiumの開発・最適化にAnthropicが技術協力し、同チップと直接接続できるローレベルカーネルの開発によって、計算効率の向上に寄与させるとしている。

ClaudeをAWSで複数の生成AIアプリケーションを利用できるサービス「Amazon Bedrock」の中核に据えることで、AWSの顧客はAIモデルとデータを同じクラウド環境に置くことができる。これにより、統一のアーキテクチャーを基盤にしてタスク精度を高めたり、トレーニングデータのセキュリティを確保したりできるメリットが大きいという。

AnthropicのDario Amodei CEOは、ClaudeモデルのファミリーがAmazon Bedrockを通じて数万人の顧客に利用され、それがすでに「何百万ものエンドユーザーのために役立っている」と語る。「今後、AWS Trainiumを利用して我々の最も先進的なAIモデルをトレーニングすることで、Amazonが保有する技術の可能性を最大限に引き出す手助けをすることを今から楽しみにしている」と述べた。 




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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