防衛用無人機開発の米Shield AIがシリーズF-1で358億円を調達。元海軍特殊部隊員らが創業

防衛用無人機とそのためのソフトウエアを開発する米Shield AIは2025年3月6日、シリーズF-1資金調達ラウンドにおける$240m(約358億円)の確保を発表した。
Shield AIは、マサチューセッツ工科大学(MIT)とフロリダ大学を卒業した技術者のRyan氏と、「Navy SEALDs」として知られる米海軍特殊部隊の士官だったBrandon氏のTseng兄弟によって、2015年設立。同じく海軍の大規模拠点があるカリフォルニア州サンディエゴに本社を置く。
無人機は沿岸警備隊と海兵隊に採用
現在は社長を務めるBrandon氏は戦場にいる際、テクノロジーによって部隊員の生命を救えたり救えなかったりする、と体感したできごとがあったという。そこで、「2030年の軍隊はどのような姿となり、自律性はどのような役割を果たすのか」、「その答えは、航空機、ドローン、船舶、衛星、潜水艦など、あらゆる軍事資産を動かすAIパイロットだ」との自問自答から、Shield AIの設立につながったと、同社のウェブサイトに記されている。
左から3人目が共同創業者兼社長のBrandon Tseng氏。シリーズF-1後の3月20日、航空宇宙メーカーのKorea Aerospace Industriesとのパートナーシップを締結した際の写真(Shied AIプレスリリースより)
そしてShield AIのプロダクトは、自律的に動く航空機と、そのためのソフトウエアで構成する。
まず航空機は「V-BAT」と名付けられたもので、底部にプロペラを有しロケットのように垂直な離陸をする。自律的に13時間以上の飛行が可能。偵察や監視の他、ミサイルサイトの破壊もできるという。こうした機能から、米沿岸警備隊と米海兵隊に採用された。
一方、ソフトウエアは「HIVEMIND」というブランド名だ。ラインナップにはOSやAIなどが並び、これらでV-BATやサードパーティーのドローンの自律飛行を行う。
2024年12月には、AI大手のPalantirとパートナーシップを締結。ここまで述べたShield AIのテクノロジーとPalantirの地理空間インテリジェンスや運用上の意思決定ツールなどを組み合わせていくという。
中央が共同創業者兼CEOのRyan Tseng氏。Palantirとのパートナーシップ契約書にサインしている(Shield AIプレスリリースより)
Palantirは、「PayPalマフィア」のPeter Thiel氏の出資により設立し、2011年、米軍がアルカイダのOsama bin Ladenを殺害する作戦を実施した際には、居所を突き止めるのに情報面で協力した。
「数百万の自律システムをつくっていく」とCTO
シリーズF-1は防衛関連のテック企業である米L3Harrisと韓国の資産運用会社が主導。その他、既存投資家も参加している。
資金は、HIVEMINDのユーザーへの展開とプロダクト構築に利用する。後者についてShield AIのNathan Michael CTOは、「自律性の開発は複雑でコストもかかる。Hivemind Enterprise はこの問題を解決し、インテリジェントマシンの自律性を迅速かつ効率的に普及させるものだ。Hivemind Enterpriseは、自律性の構築、収益化をし、今後10年間で数百万の自律システムの世界を実現することを目指す」と数字を挙げながら説明した。
また、Brandon氏は次のようにコメントした。
「Hivemind Enterpriseにより、Shield AIはすでにF-16、MQ-20、MQM-178を自律飛行させ、GPSや通信が不可能な環境でV-BATを運用し、クワッドコプターで米軍やイスラエル軍が建物内、トンネル内の探索をすることが可能になった。L3 Harrisなどの戦略企業とのパートナーシップにより、レジリエントな自律性を広める取り組みがさらに加速する」
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