核融合発電の商用化を目指す米Helion EnergyがシリーズFで658億円を調達。投資家にはStargate関係者の名が並ぶ

米核融合発電スタートアップのHelion Energyは2025年1月28日、シリーズF資金調達ラウンドで$425m(約658億円)の確保を発表した。
Helionは2013年、創業し米ワシントン州シアトルに本拠を置く。2028年までに電力供給を開始する契約を、Microsoftと結ぶ企業でもある。
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2021年に核融合温度1億度到達
われわれ地球人は、太陽から光や熱といった恩恵を受ける。太陽が燃えているのは、水素原子同士の衝突で起きる現象だ。
核融合は、原理的にはこうした太陽の活動とまったく同じである。Helionの核融合炉の場合、重水素とヘリウム3を燃料として採用。まず、これらを炉の中でプラズマ化してFRCと呼ばれる磁場を形成する。そして、FRC同士を炉の中心で衝突させることでエネルギーを得る。
Helionの技術を解説する動画
研究レベルでは、すでに一定の成果を挙げている。Helionは2019年より、「Trenta」と名付けた核融合装置を運用。2021年には、核融合温度が1億度に達したことを発表した。これは、核融合による商用発電で必要とされる温度だ。
また、核融合温度1億度到達直後からは、ワシントン州内に「Polaris」という名の核融合炉を建設。商用化へ向けた実証が行われるといい、このステップを最後に本格的な稼働へ移ると見られる。2024年には、ワシントン州保健局からPolarisの運用に必要なライセンスを取得したと発表。今回のシリーズFの発表によると、Polaris の運用はすでに始まっている模様だ。
冒頭で記した通り、Helionは2028年までにMicrosoftへ電力を供給する契約を締結している。2028年というのは、MicrosoftとOpenAIが進める大規模データセンター「Stargate」が稼働開始する予定の年だ。
Stargateは、OpenAI、ソフトバンクグループ、Oracleなどが投資するプロジェクト。2025年1月21日、Donald Trump米大統領の就任式後、ホワイトハウスに同大統領や投資家となる企業代表者が集い、構想が発表された。技術パートナーとして、MicrosoftやArm、NVIDIAも参画する。
参考記事:AIスタートアップと著名企業のパートナーシップ|最近の事例をレビュー
Helionは、Stargateとの関連には言及していない。とはいえ、OpenAIのSam Altman氏がかねてよりHelionを支援しているように、AI普及による電力需要の増大は業界的な課題だ。よって、Helionの商用化にめどが立てばStargateの重要な電力源として浮上することも考えられる。
ソフトバンクCVCが新規投資
シリーズFには、新規投資家としてソフトバンク・ビジョン・ファンド2などが、既存投資家では前出のAltman氏や鉄鋼ミニミルのNucorなどが応じた。今回の調達により、累計調達額は$1b(約1549億円)を超え、企業価値は$5b(7744億円)を超えたという。
資金の使途は、「核融合技術の商業化に向けた取り組みを拡大するため」としている。
Helionの共同創業者兼CEOであるDavid Kirtley氏は、次のようにコメントした。
「われわれの使命は、安全で信頼性の高い核融合発電、そしてそれを豊富に、手軽に供給・導入することだ。今回、名高い投資家たちの支援を得られたことは、われわれが進歩していることの証だと受け止めている」
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