3Dプリント住宅のICON TechnologyがシリーズCで86億円を調達。プリンターの技術面・マーケティング面での拡大を目論む

米スタートアップのICON Technologyが、シリーズC資金調達ラウンドで$56m(約86億円)を確保した。2025年2月14日以降、複数のメディアが報じており、ICONの広報担当者も認めている。
ICONは、カリフォルニア州オースティンに拠点を置き、3Dプリント(積層造形)での住宅建築を実現したスタートアップ。2018年、当地で行われているクリエイティブイベント「South by Southwest(SXSW)」で技術を発表してから今回の調達に至るまで、$507.5m(780億円)を集めている。
すでに建てられた住宅が存在、月面での建設も目指す
2024年のSXSWにも、ICONは出展。以下の4つのテクノロジーを展開していくと発表した。
- 多層建築を可能にするロボットプリンター
- 低炭素建築材料
- すぐに建てられる住宅デザインを含むデジタルカタログ
- AI Architect
中核的なビジネスとなるであろうロボットプリンターによる建築では従来、「Vulcan」という機器を使っていた。こちらは、たしかに3Dプリンターのように見えるフォルムであったが、2024年の発表で新型の「Phoenix」がデビュー。工場のアーム型ロボットを巨大化したような形となっている。
Phoenixの先端からは、低い炭素排出で生産された「CarbonX」というセメント質材料が射出され、造形していく。これらで、住宅の壁部分を構築していく場合は1平方フィート(約0.09平方メートル)あたり$25(約4000円)〜、基礎や屋根の工事まで行う場合は同$80(約1万2000円)〜が、建築にかかるコストとなる。
ICONのウェブサイトでは、実際に建てられた住宅を紹介。すでに実物件の実績があるICONは、地球だけでなく月での建設技術も開発している。
2022年11月、ICONは米航空宇宙局(NASA)とSBIRを通じた月面での建設システムを開発する契約を締結。$57.2m(約79億円。当時レート)の助成を受けた。さらに、翌2023年12月には、米国防高等研究計画局(DARPA)が進めるLunA-10という月面建築プロジェクトの参画企業にも選ばれている。同プロジェクトには、14社が選定された。
参考記事:米政府のイノベーション支援制度「SBIR」。プログラムはどう進行しているのか
ICONが発表した月面建設のイメージ(同社プレスリリースより)
一方、明るいニュースばかりではなく、2025年1月には従業員114人を解雇したことが明らかになっている。以前の従業員数の25%以上を削減した。企業評価額の減少が要因と見られており、今回の調達も人員削減による体制立て直しが影響している可能性がある。
今後、追加調達を実施へ
シリーズCには複数のベンチャーキャピタル(VC)が参加。またTechCrunchの報道によると、ICONは$75m(約115億円)の追加調達も予定しているという。
使途はPhoenixの開発、ならびに、Phoenixを建築業者の手に渡す計画へ使われるという。ICONのウェブサイトには、自社プロダクトの共同開発や購入希望者のための問い合わせフォームを設置しており、マーケティング面での活用も考えられる。
なお、前述の企業評価額に変化があったかは、同社はコメントを避けた模様。さらに、公式には発表していない調達であるためか、経営陣からのコメントなどは現在のところ、見られない。
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