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HysataがシリーズBで164億円を調達、高効率電解装置で「グリーン水素」を作り出す

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二酸化炭素(CO2)を排出しない水素生産の装置を開発するスタートアップ、HysataがシリーズBラウンドで$111m(約164億円)の資金調達を完了した。2024年5月、同社が発表した。

再生可能エネルギーを利用して作られた水素は「グリーン水素」と呼ばれ、次世代エネルギーとして注目を集める。オーストラリアのニューサウスウェールズ州ウロンゴンに拠点を置くHysataは、低コストで大規模なグリーン水素の生産を実現しようとしているユニコーンだ。

脱炭素を実現する新エネルギーの低コスト化を目指す

HysataはCEOのPaul Barrett氏、CTOを務めこれまでも研究成果を商業化した実績のあるGerry Swiegers氏、最高製品責任者(CPO)のTom Campey氏という3人によって2021年に設立。同社の大きな強みは、Capillary-fed electrolysis(直訳すると「毛細管電気分解」)という電解装置の性能にある。 

グリーン水素は、水(H2O)に電気を通すことによって、水素(H)と酸素(O)に分解する。大量の水素を作り出すには多くの電気が必要になるため、エネルギー効率が高ければ高いほど環境負荷低減の他、コストも下がりグリーン水素の価格を抑えられる。

同社のCapillary-fed electrolysisは、分解時の電気抵抗を限りなくゼロに近づけており、エネルギー効率が95%となっている。従来の電気分解では、エネルギー効率は75%だった。

エネルギー効率が向上すれば、コストは下がり、結果的に水素の価格も抑えられる。化石燃料から再生可能エネルギーへ移行する推進力となることも期待される。 

2023年8月には、クイーンズランド州の公有電力会社であるStanwell とともに、商業規模の実証プロジェクトを行った。 

Gerry Swiegers CTOHysataのテクノロジーを解説する動画


石油メジャー・BPのCVCなどが主導。生産力推進に活用 

シリーズB調達ラウンドは、石油メジャーのBPのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるBP Venturesと香港の投資会社がリードインベスターとなり、両社はそれぞれ$10m(約14億7000万円)を出資。また、鉄鋼メーカーのBlueScopeのCVC、同じく鉄鋼のPOSCOグループ2社などが応じた。

Hysataは今回調達した資金を、ウロンゴンにある施設の生産能力拡大と、ギガワット規模のプロダクト開発に充てる。

CEOのPaul Barrett氏は、資金調達を受けて次のようにコメントした。

「Hysataのミッションは、世界で最も効率的でシンプルであり、かつ信頼性の高い電解装置を提供することだ。そして、鉄鋼、化学、輸送などのCO2排出削減が困難な業界においても、大幅な脱炭素化を成し遂げていく。高効率、低コストの設備、大量生産可能な設計により、グリーン水素のコスト引き下げを目指していく。

今回の資金調達は、グリーン水素の分野でHysataの大きな影響を示した。資金調達により、チームは強化され、会社の能力が向上し、商業化へ向けて前進していく」





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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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