排ガスから水素を生産するUtility GlobalがシリーズCで78億円を調達。ArcelorMittal のCVCが出資
オフガストゥバリュー企業のUtility GlobalはシリーズC資金調達ラウンドで、鉄鋼大手のArcelorMittalのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるXCarb Innovation Fundから$53m(約78億円)を調達した。2024年9月に発表した。
化学大手AramcoのCVCも、XCarbを通じて今回の投資に参加している。
Utility Globalは製鉄プロセスで発生する二酸化炭素(CO2)から水素を生成する技術を開発する。
製鉄工程で発生するガスを低コストで水素に変換
製鉄プロセスで発生するガスにはさまざまなものがあり、CO2や合成ガスなどがある。特に問題となっているのは原料の鉄鉱石から鉄を還元する際に使用するコークス由来のCO2だ。
そこで、日本製鉄や、JFEスチール、神戸製鋼所などでもこのコークスを使用せずに製鉄を行う「直接水素還元技術」の開発が進められている。
一方、Utility Global はさまざまな製鉄プロセスで発生するガスを、電気を使用せずに高純度の水素と濃縮CO2 ストリームに処理する独自の反応炉を開発した。
この反応炉は単独で動作し、コスト効率が高い。またモジュール方式を採用しており拡張性も高い。そして製鉄ガスから生成された水素は、コークスの代わりに製鉄プロセスに再循環できる。一方、濃縮 CO2 ストリームの純度により、その後の炭素回収が大幅に簡素化され、コストも削減される。
2024年7月には、提携するコロラド鉱山大学との共同研究によりコロラド州から$150k(約225万円)の助成金を取得した(取得者はコロラド鉱山大学)。
今回の投資で製品化を加速
このラウンドで得た資金は、「Utility Globalの実証済み、特許取得済み、テスト済みのテクノロジーの商業化と市場投入戦略をさらに加速させるのに役立つ」と説明されている。実際、製鉄施設での実証プログラムはすでに成功しており、単一の反応炉で高炉の排ガスから初めて水素が生成されたことから、同社は商業展開に移行した。
調達資金について具体的には、同社の製品ラインの下で2026年に最初の商業ユニットを展開することを目指した最終設計と製品化に当てるものと考えられる。
また、協力契約に基づきUtility GlobalはArcelorMittalの統合製鉄所の 1つ以上に「商業用施設」(実用レベルのユニットと思われる)を設置する予定だ。
Utility GlobalのCEOであるClaus Nussgruber氏は、次のようにコメントした。
「当社を支援する素晴らしい投資家の数が増えている。顧客と投資家は、この10年間で温室効果ガス排出量を大幅に削減できる、コスト効率の高いオンサイト脱炭素化ソリューションを求めている」
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